欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/11/10

EU産業・貿易

ルクセンブルクが340社と税優遇の取り決め、ユンケル氏の指導力に影響も

この記事の要約

米ワシントンに本部を置く国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は5日、ルクセンブルク当局が世界の大手企業340社以上との間で、税制上の優遇措置に関する秘密の取り決めを結んでいたとする調査結果を公表した。EUは国際的に […]

米ワシントンに本部を置く国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は5日、ルクセンブルク当局が世界の大手企業340社以上との間で、税制上の優遇措置に関する秘密の取り決めを結んでいたとする調査結果を公表した。EUは国際的に批判が高まっている多国籍企業の課税逃れに厳しく対処する姿勢を鮮明に打ち出し、欧州委員会は低税率を武器に企業誘致を推進してきたルクセンブルクなどの課税措置が違法な国家補助にあたる可能性があるとして調査を進めている。しかし、同取り決めは、今月1日付で欧州委員長に就任したユンケル氏がルクセンブルクの首相兼財務相を務めていた期間に交わされたとされており、同氏の責任を問う声が強まる可能性もある。

ICIJは独自に入手した2万8,000ページに上る資料を分析し、2002~10年にルクセンブルク当局と多国籍企業の間で交わされた取り決めを特定した。該当する企業には米飲料大手ペプシコ、米消費財大手プロクター&ギャンブル、スウェーデン家具販売大手イケアなどが含まれている。ICIJによると、これらの企業はルクセンブルクに事業実態のない子会社を設立し、さまざまな手法を用いて他国で得た利益を同社に移すことで低税率の適用を受けていたとみられる。たとえば国際宅配大手の米フェデックスの場合、ルクセンブルクの持ち株会社に対する課税率は1%に満たないという。

一方、一連の租税回避策は米大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が助言していたとされる。PwCはこれに対し、個々のケースについてはクライアントとの守秘義務のためコメントできないとしたうえで、ICIJが入手した資料は同社のオフィスから不正に持ち出されたものだと反論。「税法上の国際ルールに従って助言を行っている」と強調している。

ルクセンブルクのグラメーニャ財務相は6日の会見で、当局と企業との取り決めはすべて「完全に合法」であり、他国でも同じような措置がとられていると強調。そのうえで、多国籍企業がタックスヘイブン(租税回避地)としてルクセンブルクを利用することは容認できないが、租税回避の問題は1国だけでは解決できないと述べ、国際的な協調が不可欠と指摘した。また、今回判明した秘密の取り決めがユンケル氏の首相在任中に結ばれていた点に関しては、「これは行政手続き上の問題で、政治家個人あるいは政府がルールを決めたわけではない」と述べ、ユンケル氏の責任を追及することは「誤っている」との認識を示した。

一方、欧州委のスキナス報道官は6日、「フェスターガー委員(競争政策担当)はアルムニア委員の後任としてなすべきことをする。(ルクセンブルクの課税措置に関する調査の)結果がネガティブな内容であれば、断固とした処置を取る」とコメントした。