EU加盟国、最低法人税率の適用指令案やウクライナ向け支援策で合意

EU加盟国は12日開いた大使級会合で、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへの財政支援や、世界共通の最低法人税率の導入に関する指令案で基本合意した。いずれもハンガリーが拒否権を行使し、他の加盟国との間で数カ月にわたり議論が平行線をたどっていたが、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた経済の立て直しを支援する復興基金からハンガリーに対する総額58億ユーロの補助金の拠出を承認する方針で一致したことから、ハンガリー側が反対を取り下げた。

2023年にウクライナに180億ユーロ(約2兆6,000億円)の財政支援を行う計画は、15日の首脳会議で正式に承認された(ロシアへの追加制裁とウクライナ支援に関する記事参照)。

世界共通の最低法人税率の導入に関する指令案は、経済協力開発機構(OECD)加盟国を中心とする約140カ国が21年10月に合意した内容に沿って、欧州委員会が同年12月に提案していた。EU域内で活動する多国籍企業に適用する法人税の最低税率を15%に設定し、事業展開する国・地域で実効税率が15%を下回る場合、域内のグループ企業に「追加税(top-up tax)」を課すことなどを柱とする内容。実効税率が15%を下回る域外の国・地域にグループの親会社がある場合は、域内の子会社に追加税を課すことができるようにする。

閣僚理事会の正式な承認を経て新ルールが導入される。加盟国は23年末までに新指令に沿って国内法を整備する必要がある。

一方、ハンガリーに対する復興基金からの拠出をめぐっては、欧州委が11月末、条件付きで承認していた。ハンガリーは21年5月に復興計画を欧州委に提出し、コロナ禍からの経済再建を支える総額7,500億ユーロの復興レジリエンス・ファシリティ(RRF)から返済不要の補助金72億ユーロの拠出を求めた。復興基金は大半の加盟国に対して21年から予算執行されてきたが、ハンガリーに関しては法の支配の順守を予算配分の条件とする規定に基づき、欧州委による審査が長引いていた。

大使級会合ではハンガリーに対するEU予算の執行に関連して、欧州委が提案していた拠出の一時停止措置を緩和することでも合意した。欧州委は11月末、法の支配の原則に違反した加盟国に対し、EU予算の執行を一時停止することができる規則をハンガリーに適用し、結束政策に基づく75億ユーロの拠出を一時停止すべきだとの審査結果を公表した。同規則の発動を回避するため、ハンガリー側は8月、EU予算の支出先や使途を監視する独立機関および汚職対策のための作業部会の設置などの改善策を提示したが、欧州委は進捗が遅いとして、21~27年の予算枠組みでハンガリーに配分される結束基金のうち、約3分の1相当の交付を凍結することを加盟国に提案していた。会合ではこの額を63億ユーロに減額することで合意した。復興計画とともに、閣僚理で最終決定する。

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