仏政府が年金改革案発表、受給開始64歳に引き上げ

フランス政府は10日、受給開始年齢の引き上げを柱とする年金制度改革案を発表した。物価高騰対策で財政赤字が拡大する中、持続可能な年金制度の確立に向け、実質的な定年退職年齢にあたる受給開始年齢を段階的に引き上げる。野党や労働組合は強く反発しており、大規模な抗議行動が懸念されている。

改革案によると、受給開始年齢を現行の62歳から段階的に引き上げ、2030年に64歳とする。マクロン大統領は65歳への引き上げを目指していたが、組合などの反発を受けて1歳早めた。また、年金の最低支給額を現状より約100ユーロ引き上げ、月額1,200ユーロ(約17万円)とすることも提案した。

改革案は2月から議会で審議される。マクロン氏率いる与党連合は下院で過半数を下回っているものの、仏メディアによると、中道右派・共和党の支持で法案が可決される可能性がある。政府は9月1日の施行を目指している。

ボルヌ首相は記者会見で「年金制度を維持するには改革が不可欠だ。変化に対してさまざまな疑問や不安が生じることは承知しているが、国民を説得して支持を得るのが政府の仕事だ」と述べ、制度改革への理解を求めた。

労組は改革案に強く反発している。仏メディアによると、フランス最大組織の労働総同盟(CGT)など主要8労組は19日に大規模な抗議デモを計画しており、左派系野党が賛同している。極右政党・国民連合のルペン前党首もツイッターへの投稿で「不当な改革を全力で阻止する」と強調した。

17年に大統領に就任したマクロン氏は1期目にも年金改革を打ち出したものの、燃料増税への反発から全国に広がった反政府デモ「黄色いベスト運動」の高まりで大規模なストライキに直面。20年には新型コロナウイルス感染拡大を理由に、改革をいったん断念した経緯がある。最近の世論調査では国民の約7割が受給開始年齢の引き上げに反対している。

上部へスクロール