フランス政府は米国の「インフレ抑制法」への対抗策として、EU企業への支援体制を強化する産業戦略「メード・イン・ヨーロッパ」を採用するようEUに提案したもようだ。ロイター通信が16日、独自に入手した文書をもとに報じた。EUは2月9~10日にブリュッセルで開く首脳会議で産業政策について協議することになっており、仏政府は「野心的で強固な欧州産業政策」が不可欠と訴えている。
電気自動車(EV)購入優遇策などを盛り込んだ米国のインフレ抑制法をめぐり、EU側は同法が再生可能エネルギーへの移行促進を目的としている点を評価する一方、米国内での生産に対する税控除や補助金交付により、EV製造やグリーン技術などを手がけるEU企業が競争で不利になる点を強く懸念している。欧州委員会は米政府の補助金措置でEU企業が生産拠点を米国に移すといった事態を防ぐため、EU国家補助規則を改正する方向で検討を進めており、月内にも具体策をまとめる方針を示している。
ロイターによると、仏政府は特に太陽光パネル、電池、水素、幅広い産業で必要不可欠な「重要な原材料」を取り扱うEU企業が引き続き域内に拠点を維持するための緊急措置が必要と主張。メード・イン・ヨーロッパ戦略の下で◇域外の供給業者への依存度を低減するとともに、主要部門における2030年までの生産目標を設定し、生産拠点を新設する際の許認可プロセスを簡素化する◇EU国家補助規則を早急に見直し、加盟国が補助金交付や税控除などの形で投資を後押しできるようにする◇共同債を発行して新たな基金を創設し、加盟国が経済規模に関係なく公平に重要セクターを支援できるようにする――などを提言している。