欧州の天然ガス価格が18カ月ぶり50ユーロ割れ、暖冬で高い貯蔵率

欧州の天然ガス価格が昨夏のピーク時と比べて80%以上低い水準で推移している。欧州の天然ガス価格の指標となるオランダTTF(翌月渡し)は17日に一時、1メガワット時あたり48.90ユーロまで下落し、ほぼ18カ月ぶりに50ユーロを下回った。暖冬で暖房需要が抑えられ、例年より高い貯蔵率が確保されているためで、市場では次の冬にかけて深刻なガス不足に陥る事態は回避できるとの見方が出ている。

ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機で、オランダTTFは2022年8月に340ユーロ強まで上昇した。これは過去10年間の平均価格の10倍を超える水準だ。ロシアからの欧州向けガス供給が減り続ける中、EUは液化天然ガス(LNG)の輸入を増やすなど調達先の多様化を進め、冬に向けて貯蔵率を高めていた。9月以降はガス価格が下落に転じ、1月下旬にはオランダTTFが60ユーロを下回った。

ガス業界団体GIEによると、EU全体の天然ガス貯蔵率は現時点で65%に達し、過去2年の同時期と比べて30~40%高くなっている。気象予測によると、3月も総じて穏やかな天候が続き、暖房需要はさらに減る見通し。アナリストらはロシアからのガス供給が低水準で推移しても、EU域内では次の冬に向けて高い貯蔵率を維持できるとの見方を示している。

ただ、この時期の過去5年の平均と比べると欧州のガス価格は約2倍の水準で推移しており、中国の景気回復による需要増などで価格が再び上昇する懸念も残っている。

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