伊通信最大手テレコムイタリアは24日、米大手投資ファンドKKRから提示された固定通信網の買収案について、KKRに財務データを提供して条件の引き上げを促す方針を明らかにした。同日開いた取締役会でKKRの提案について協議した結果、提示された条件はテレコムイタリアの「資産価値を全く反映していない」として、応札期限の3月24日までに「より魅力的な提案」を引き出す必要があるとの結論に達した。
買収案の詳細は明らかにされていないが、KKRはテレコムイタリアに対し、固定通信網部門の過半数株式の取得を提案している。海底ケーブル部門「スパークル」の株式取得も予定しており、両部門で構成する新会社を立ち上げる計画とされる。KKRが提示した買収金額は負債を含めて200億ユーロ(2兆8,770億円)程度とみられている。
KKRは22日、テレコムイタリアに提示した法的拘束力のない買収提案の有効期限を4週間延長し、3月24日までに正式入札すると表明した。テレコムイタリアの通信網を戦略的資産と位置づけるイタリア政府の要請を受けた措置。テレコムイタリアは巨額のインフラ投資で債務が膨れ上がった固定通信網部門の切り離しを検討しており、大株主の伊政府系金融機関である預託貸付公庫(CDP)が買収に動いたものの、同じく大株主の仏メディア・通信大手ビベンディが価格を不満として反対に回り、計画が行き詰まっていることが背景にある。
KKRはこれまでに約18億ユーロを投じ、ラストワンマイルと呼ばれる家庭と最寄りの基地局を結ぶ通信網を運営するテレコムイタリア子会社の株式37.5%を取得している。KKRは2021年に債務引き受けを含めて330億ユーロでテレコムイタリアを丸ごと買収することを提案したが、ビベンディが価値を過小評価しているとして反対し、実現に至らなかった経緯がある。