エネルギー効率化指令改正案、欧州議会と閣僚理が基本合意

欧州議会とEU閣僚理事会は10日、2030年までの省エネ目標を定めたエネルギー効率化指令の改正案で基本合意した。20年時点における30年のベースライン予測に対し、EU全体の最終エネルギー消費(産業活動や家庭でのエネルギー消費)を同年までに少なくとも11.7%削減するという内容。欧州委員会が当初提案していた「少なくとも9%」より厳しく、ロシア産化石燃料依存からの早期脱却を目指す「リパワーEU」の中で打ち出された「13%」より緩やかな目標で合意が成立した。欧州議会と閣僚理の正式な承認を経て新ルールが導入される。

エネルギー効率化指令改正案は、50年の気候中立化に向け、30年までにEU域内の温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減する目標を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」の一環として、欧州委が21年7月に提案したもの。閣僚理と欧州議会は欧州委案にいくつかの修正を加えたうえで、22年6月と11月にそれぞれ改正指令案を採択していた。

最終エネルギー消費をめぐっては、欧州委は当初、20年時点での予測値に対し、30年までにEU全体で少なくとも9%削減するとの目標を打ち出したが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、早期の脱ロシア依存を目指して策定したリパワーEUの中で、目標を13%に引き上げることを提案していた。今回合意された11.7%の省エネ目標により、最終エネルギー消費と一次エネルギー消費(発電所などエネルギー転換部門でのエネルギー消費を含む)の上限は石油換算でそれぞれ7億6,300万トン、9億9,300万トンに設定される。

省エネ目標は24年から30年にかけて段階的に引き上げ、この間に最終エネルギー消費を年平均1.49%削減し、30年末までに1.9%の達成を目指す。

一方、改正指令案はエネルギー効率の改善に向けて公共部門に大きな責任を課している。加盟国の公的機関は年1.9%のエネルギー消費削減が義務付けられ、公共調達においてエネルギー効率の側面を考慮する必要がある。また、公的機関が所有する建物の総床面積の少なくとも3%を毎年改修することが義務付けられる。

さらに加盟国は人口45,000人以上の自治体で地域冷暖房システムの導入を推進することが義務付けられる。また、加盟国はエネルギー効率化を促進するプロジェクトへの投資を促すため、革新的な融資制度やグリーンローン商品の導入に取り組むとともに、投資規模を欧州委に報告する必要がある。

さらに生活する上で必要な最低限のエネルギー需要を満たすことができない「エネルギー貧困」の問題に対処するため、加盟国は低所得層などに対する資金及び技術面の援助や、光熱費の未払いなどによってトラブルが生じた場合の紛争解決のメカニズムを整備することが義務付けられる。

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