欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/3/20

EU情報

欧州議会が建物のエネルギー性能指令改正案を可決、新築建物は28年までに排出ゼロへ

この記事の要約

欧州議会は14日の本会議で、建物のエネルギー性能に関する指令の改正案を賛成多数で可決した。新築の建物は2028年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとすることを義務付けるほか、現在は国ごとに異なるエネルギー性能証明書の評価 […]

欧州議会は14日の本会議で、建物のエネルギー性能に関する指令の改正案を賛成多数で可決した。新築の建物は2028年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとすることを義務付けるほか、現在は国ごとに異なるエネルギー性能証明書の評価基準を統一し、EU全域で既存建築物の改修を促進する。閣僚理事会は22年10月に改正案の内容で合意しているが、全体として欧州議会より緩やかなルールとなっているため、両機関は法案成立に向けて近く交渉を開始する。

欧州委員会によると、建築物はEU域内におけるエネルギー消費の40%、温室効果ガス排出量の36%を占める。エネルギー性能指令の改正案は、50年の気候中立化に向け、30年までにEU域内の温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減する目標を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」の一環として、欧州委が21年12月に提案したもの。老朽化したビルなどの改築を促進し、断熱強化や冷暖房効率の向上、照明の効率化などによって建物のエネルギー性能を高め、温室効果ガス排出量を実質ゼロに近づけることが狙いだ。

改正案によると、公的機関が所有・借用・運用する新築の建物は26年、それ以外の新築建物は28年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにしなければならない。技術的および経済的に実現可能な場合、すべての新築建物は28年までに太陽光発電の設置が義務付けられる。大規模改修中の住宅用建物は32年を達成期限とする。

一方、エネルギー性能証明書については評価基準をA(最高レベル)~G(最低レベル)の7段階に統一し、ゼロ排出をレベルA、各加盟国でエネルギー性能が最も低い15%の建物をレベルGとする。加盟国はこの評価基準に基づいて◇住宅以外の建物と公的機関が所有する建物は27年までに最低でもレベルE以上、30年までにレベルD以上◇住宅建物は30年までにレベルE以上、33年までにレベルD以上の要件を満たすよう、既存建築物の改修を進めることが求められる。

加盟国は独自の判断で歴史的建造物や技術的に価値の高い建物、教会や礼拝堂などを規制の対象から除外することができる。また、公営住宅についても改修によって家賃が上昇し、エネルギー性能の向上に伴う光熱費の節約では補えない場合は適用除外が認められる。