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2023/3/20

西欧

UBSがクレディ・スイス買収で合意、スイス政府と中銀が後押し

この記事の要約

スイス金融最大手UBSは19日、経営危機に陥った同業のクレディ・スイスを買収することで合意したと発表した。米中堅銀行シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻を発端とする金融市場の混乱は、世界有数の金融機関が統合する大型再 […]

スイス金融最大手UBSは19日、経営危機に陥った同業のクレディ・スイスを買収することで合意したと発表した。米中堅銀行シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻を発端とする金融市場の混乱は、世界有数の金融機関が統合する大型再編に発展した。

合意によると、取引は株式交換で行われ、クレディ・スイスの株主に対し、クレディ株22.48株につきUBS株1株を割り当てる。クレディ株を1株あたり0.76スイスフラン(約108円)で買い取る計算で、買収総額は約30億スイスフラン(約4,260億円)相当。UBSは当初提示したとされる1株あたり0.25スイスフランから3倍強に引き上げたが、17日のクレディ株の終値(1.86スイスフラン)を6割近く下回る水準だ。買収は年内の手続き完了が見込まれる。

クレディ・スイスの破綻がスイス発の金融危機につながりかねないとの懸念が強まる中、スイス政府やスイス国立銀行(中央銀行)が強く後押しする形で買収交渉が進められた。合意を受け、スイス中銀は両行に最大1,000億スイスフランの流動性支援融資を行うと表明。スイス政府は特例措置として、両行が株主の承認を得ずに買収を実行できるようにするほか、財務省はUBSがクレディ・スイスから引き継ぐ資産の価値が下がったり、買収に伴う訴訟などで将来損失が生じた場合、90億スイスフランの政府保証を付与する方針を発表した。

クレディ・スイスは2021年に米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引で巨額損失を出して業績が悪化。22年にはブルガリアの麻薬組織によるマネーロンダリング(資金洗浄)を阻止できなかったとして、スイス連邦刑事裁判所から有罪判決を受けたほか、モザンビークでの汚職への関与が発覚するなど、不祥事が相次いだ。さらに投資銀行部門が不振で、人員削減や事業分離を伴う経営再建を進めていたが、SVBの破綻による市場の動揺が追い打ちをかけ、信用不安からクレディ・スイスの株や債権を売却する動きが加速していた。

同行が経営危機に陥った直接の原因は、14日に公表した年次報告書で、21年12月期と22年12月期の財務報告の内部管理に「重大な弱点」があったと発表したことだ。15日には筆頭株主のサウジナショナル・バンクが追加投資しない意向と報じられ、クレディ株は過去最安値を更新した。

こうした中でスイス中銀と連邦金融市場監督機構(FINMA)は15日、共同で声明を発表し、必要に応じて資金供給を行うと表明。クレディ・スイスは16日、中銀からの資金供給で最大500億スイスフランを調達する用意があると発表した。しかし、その後も経営不安は解消されず、UBSがライバルの救済に乗り出した。