欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/11/17

EU産業・貿易

カナダとの貿易協定、ISDS条項に「若干の修正余地」=欧州委員

この記事の要約

欧州委員会のマルムストロム委員(通商担当)は10日、ベルリンでドイツのガブリエル経済・エネルギー相とEU・カナダ間の包括的経済貿易協定(CETA)について協議し、投資家保護を目的とするISDS(投資家対国家の紛争解決)条 […]

欧州委員会のマルムストロム委員(通商担当)は10日、ベルリンでドイツのガブリエル経済・エネルギー相とEU・カナダ間の包括的経済貿易協定(CETA)について協議し、投資家保護を目的とするISDS(投資家対国家の紛争解決)条項に関しては、わずかながら修正の余地があるとの認識で一致した。協定の締結交渉自体はすでに妥結しているが、ドイツは最後までISDS条項の削除を要求していたことから、欧州委が調整に乗り出した恰好。今回、ドイツ側が歩み寄りの姿勢をみせたことで、署名に向けた詰めの作業が加速するとみられる。

マルムストロム委員は会談後の共同記者会見で、カナダとの包括的な協定がEU経済にもたらすメリットを強調したうえで、合意文書を法的側面からチェックする作業の過程で「若干の明確化と調整の余地はある」と発言。一方、ガブリエル経済相は「投資家保護条項の完全な放棄が現実的な選択肢とは考えていないが、改善の余地はある」と述べた。

EUとカナダは2009年10月にCETA交渉を開始した。当初は12年末の妥結を目指していたが、農産品の市場アクセス、カナダ製自動車に対する関税の低減、政府調達へのアクセス改善などをめぐって調整が難航。交渉は一時こう着状態にあったが、昨年10月に欧州委のバローゾ委員長とカナダのハーパー首相がCETA締結で基本合意し、9月末の首脳会議で協定案の内容で正式合意した。ただ、ドイツはISDS条項によって国家の規制権限が制限されることを強く懸念しており、ガブリエル経済相は首脳会議の前日、同条項を排除しなければCETA締結に反対すると発言し、物議をかもした経緯がある。