イタリア政府は1日、労働市場改革の法令を閣議決定した。雇用促進が主眼だが、労働市場の流動性を高めるため、短期雇用の規制を緩和するなど企業寄りの政策が目立ち、労組は反発している。
メーデーに合わせて発表された同法令によると、短期雇用契約のルールを改正し、企業は現在より長い12~24カ月契約で労働者を雇うことができる。このほか、2023年7~12月の6カ月間にわたって、低所得労働者が払う給与税を減税する。少子高齢化対策として、子供がいる労働者の付加給付に対する課税を今年は免除することなども盛り込んだ。
一方、福祉政策は後退し、就労可能な状況にあるのに働いていない人(18~59歳)への公的給付を現在の1世帯当たり月平均550ユーロから350ユーロに削減。給付期間を最長12カ月に短縮する。さらに、職業訓練を受けることが給付の条件となる。
独裁者ムソリーニが率いたファシスト党の流れをくむ極右政党「イタリアの同胞(FDI)」のメローニ党首は、昨年の総選挙で企業に有利な環境整備を公約の柱の一つに掲げて勝利し、現政権が発足した。今回の措置には、こうした姿勢が色濃く反映された。最大労組のイタリア労働総同盟(CGIL)は、とくに短期雇用の規制緩和に対して、雇用の安定が損なわれるとして批判している。