加盟国が難民受け入れ分担案で合意、拒否なら1人につき2万ユーロ負担

EU加盟国は8日の司法・内務担当相理事会で、難民や移民の受け入れに関する新たな制度案の内容で合意した。難民が最初に到着した国が審査や保護の責任を負う現行制度を見直し、加盟国が受け入れや本国送還などの負担を分担するシステムに移行する。今後、欧州議会との交渉に入り、最終案を取りまとめる。

現行の「ダブリン規則」は、難民が最初に到着した加盟国に難民申請の審査義務や審査が通った場合の保護義務を課している。難民の多くは中東やアフリカから地中海やトルコ経由で欧州を目指すため、大半が地中海沿岸国にたどり着く。シリアなどから120万人以上の難民・移民が欧州に押し寄せた2015年の「難民危機」以降、ギリシャやイタリアなどに過度な負担がかかっている現状を改善するため、欧州委は20年9月、すべての加盟国に「公平な負担」を求める制度改革案を発表した。しかし、受け入れに難色を示す東欧諸国などの反対で議論が長期化していた。

新たな制度案によると、ギリシャやイタリアなどに到着した難民・移民について、各国に年間3万人程度の受け入れを求める。受け入れを拒否する場合は、1人あたり2万ユーロ(約300万円)をEUが運用する基金に拠出する必要がある。資金の代わりに資材や人材などを提供して責任を果たすこともできる。また、難民認定される可能性が極めて低い流入者が長期にわたり域内に留まる事態を防ぐため、国境審査を迅速化して早期に本国送還する仕組みを整備する。

EU議長国スウェーデンのステネルガール移民担当相は「どの国も単独で難民・移民問題に対処することはできない。最前線の国々は他の加盟国の連帯を必要としており、すべての加盟国が合意されたルールを順守して責任を果たさなければならない」と強調した。

AFP通信によると、閣僚理の採決ではハンガリーとポーランドが反対票を投じ、スロバキア、ブルガリア、マルタ、リトアニアは棄権した。ハンガリーのオルバン首相は9日、フェイスブックに「EUは権力を乱用している。ハンガリーに移民を強制的に移送しようとしており、受け入れられない」と投稿した。

EU庇護機関(EUAA)によると、22年にEU加盟国とスイス、ノルウェーでの難民申請数が計96万6,000人に上った。新型コロナウイルス禍による渡航制限が緩和されたことや、ロシアのウクライナ侵攻やアフリカでの紛争による食糧危機を背景に、欧州を目指す難民・移民が急増しており、15~16年の欧州難民危機以来の水準となっている。

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