欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/12/1

総合 – 欧州経済ニュース

欧州委が3千億ユーロ超の投資計画発表、新基金で民間投資呼び込みへ

この記事の要約

欧州委員会のユンケル委員長は11月26日、停滞しているEU経済の活性化に向けた投資計画の概要を発表した。EUの信用保証と欧州投資銀行(EIB)の拠出によって、210億ユーロ規模の「欧州戦略投資基金(EFSI)」を創設。同 […]

欧州委員会のユンケル委員長は11月26日、停滞しているEU経済の活性化に向けた投資計画の概要を発表した。EUの信用保証と欧州投資銀行(EIB)の拠出によって、210億ユーロ規模の「欧州戦略投資基金(EFSI)」を創設。同基金を使ってインフラ整備プロジェクトなどへの投資を保証することで、向こう3年間で民間から総額3,000億ユーロを超える投資を呼び込むことを目指す。

同投資計画は11月に発足した新欧州委が看板政策に掲げていたもの。加盟国が財政緊縮を余儀なくされていることで公共投資が縮小する中、民間資金を活用して投資プロジェクトを推進し、景気を浮揚する狙いがある。

ユンケル委員長が欧州議会で発表した計画によると、EFSIはEUの政策金融機関であるEIBによって運営される。EUが補助金向け予算から80億ユーロを拠出して、160億ユーロの信用を供与。EIBが拠出する50億ユーロを合わせて、210億ユーロの基金とする。これを元手にEIBが市場で資金を集め、630億ユーロまで増強する。これを使って投資を保証し、民間企業が投資を行いやすい環境を整えることで、2015~17年の3年間で総額3,150億ユーロ以上の新規投資を呼び込みたい考えだ。これによって3年間で130万人の雇用創出が見込めるとしている。

主な投資対象となるのは交通、エネルギー、通信、教育、研究開発などのインフラ整備。具体的な候補は、欧州委とEIBが設立する作業部会が12月に固める。

同計画は12月18、19日に開かれるEU首脳会議での承認を経て実施される。欧州委は2015年半ばまでのEFSI始動を見込んでいる。

ユンケル委員長は3,000億ユーロ規模の投資を公約に掲げていた。発表された計画は同方針に沿ったものだが、EUによる新規の資金投入はなく、目標額は元手を15倍に拡大するというレバレッジ効果が前提となっている。このため、期待しているような効果があるか疑問視する見方が多い。これに関してユンケル委員長は、「新規資金が必要だという声を聞くが、後の世代に負担を押し付けるわけにはいかない」と述べ、EUの財政負担を増やさない方式での実施を決めたと説明。「必要なのは新たなスタートと新規投資だ」として、同計画は新規投資拡大の呼び水として十分に機能するとの見解を示した。