欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/12/1

総合 – 欧州経済ニュース

英が移民の社会保障制限でEUに承認迫る、離脱も視野に

この記事の要約

英国のキャメロン首相は11月28日、EU域内からの移民に対する社会保障給付を制限する方針を発表した。国内の反移民感情の高まりを受けて移民の流入に歯止めをかけるのが狙い。今後は移民への制限措置を可能にするようEU条約の改正 […]

英国のキャメロン首相は11月28日、EU域内からの移民に対する社会保障給付を制限する方針を発表した。国内の反移民感情の高まりを受けて移民の流入に歯止めをかけるのが狙い。今後は移民への制限措置を可能にするようEU条約の改正を求めて交渉していく考えで、認められない場合はEU離脱も辞さない構えを示している。

英国では過去10年で移民の流入が急速に拡大しており、14年は推計26万人増えた。移民増をめぐっては、国民の福祉の負担が増えるなどとして不満が高まっており、反EU・反移民を掲げる英国独立党(UKIP)が急速に支持を伸ばしている。

イングランド中部ミッドランズで演説したキャメロン首相は、移民は英国に利益をもたらす側面があることを認めながらも、移民の数は「コントロールされるべきだ」と強調。福祉目当ての移民を抑制するため、◇入国半年以内に就職できなければ国外退去を求める◇所得税減免や子ども手当受給・公営住宅入居は4年間居住した後に申請可能とする◇母国に子どもを残している出稼ぎ労働者は子ども手当を受給できない――などの対策を発表した。同首相は制限措置を実施するためにはEUとの条約の改正交渉が必要になると指摘。交渉が不調に終わった場合には、「いかなる選択肢も排除しない」と語り、EU離脱も視野に入れる考えを明らかにした。

欧州委員会の報道官はキャメロン首相の発表を受け、「英国の措置について冷静かつ慎重に協議する」と述べた。また、1日付けでEU大統領に就任するポーランドのトゥスク前首相は英紙『フィナンシャル・タイムズ』の取材に対し、EUの基本原則である移動の自由に議論の余地はないとする一方で、英国がEUにとどまれるよう妥協点を探っていく考えを示した。