欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/12/8

EUその他

欧州宇宙機関が次世代ロケット開発へ、低コスト化で競争力向上狙う

この記事の要約

欧州宇宙機関(ESA)は2日にルクセンブルクで閣僚級会合を開き、人工衛星打ち上げロケット「アリアン5」の後継機「アリアン6」の開発を決定した。商業衛星打ち上げ市場をめぐる競争が激化するなか、現行機と比べ低コストの新型ロケ […]

欧州宇宙機関(ESA)は2日にルクセンブルクで閣僚級会合を開き、人工衛星打ち上げロケット「アリアン5」の後継機「アリアン6」の開発を決定した。商業衛星打ち上げ市場をめぐる競争が激化するなか、現行機と比べ低コストの新型ロケットを投入することで優位に立つことを目指す。

アリアン6は38億ユーロを投じ、2020年に1号機を打ち上げる予定。最大の出資国フランスが約5割、ドイツが約2割を拠出する。フランスのフィオラゾ高等教育・研究相は今回の決定を「歴史的だ」と評価し、フランス国内で1万6,000人、欧州全体で3万5,000人の雇用確保につながるとの見方を示した。

アリアン5は世界最大級の商用ロケットで、これまでに62回連続で打ち上げに成功し優れた実績を誇るが、運用コストの高さからこのところ台頭している米宇宙ベンチャーのロケットなどと比べ価格競争力に劣ると指摘されている。アリアン6はアリアン5を受け継いだ液体燃料に、2~4基の固体燃料ブースターが加えられる。打ち上げニーズの変化に合わせ、様々な大きさの衛星に対応できる仕様にしたほか、燃費性能を向上させる。打ち上げコストは最も重い衛星で7,500万~8,500万ユーロと予想され、これまでと比べ最大で5割減となる見通し。

閣僚級会合ではこのほか、小型ロケット「ヴェガ」のアップグレード開発に取り組むことと、国際宇宙ステーション(ISS)計画への参加継続を決定した。ESA高官は、今回の決定は、欧州が主導する火星探査計画「エクゾマーズ」とあわせ、欧州の宇宙へのアクセスを保証するものだと語った。