欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/12/15

総合 – 欧州経済ニュース

仏政府が経済活性化法案を発表、日曜営業の拡大など柱

この記事の要約

仏政府は10日、経済活性化に向けた法案を発表した。小売店の日曜営業に関する規制緩和や解雇に係る紛争処理の迅速化などが柱だが、労働者の権利を重視する与党・社会党の左派勢力からは早くも批判が噴出。市民による抗議デモも行われる […]

仏政府は10日、経済活性化に向けた法案を発表した。小売店の日曜営業に関する規制緩和や解雇に係る紛争処理の迅速化などが柱だが、労働者の権利を重視する与党・社会党の左派勢力からは早くも批判が噴出。市民による抗議デモも行われるなど反発が広がっており、法案成立までには曲折が予想される。

法案には◇現在年間5日まで認められている小売店の日曜営業の日数を最大12日に増やす。パリなど観光区域では営業時間を深夜0時までに延長する◇公証人や執行官の事務所設立を容易にする◇労働審判制度の改革により、解雇に係る複雑な紛争処理手続きを簡素化する◇政府が保有する上場企業株式の売却◇長距離バスの運行経路の自由化による交通部門の競争促進◇運転免許証取得手続きの簡素化および取得費用の引き下げ◇建設業の不正防止に向けた専用IDの導入――などが盛り込まれている。マクロン経済相は「フランス経済が緊急事態にあることを考えると、我々にはこの機会を逃す権利はない」と改革の必要性を訴えた。

フランスは景気低迷の長期化で財政再建が遅れている。10月に発表された2015年度予算案では、財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以下に抑える目標を2年先送りした。EUは同国の財政悪化を問題視しており、欧州委員会は来年3月までに財政再建路線を明確にするよう要請。再建に失敗した場合には制裁を課す可能性を示唆している。

オランド政権としては法案を速やかに成立させ、ビジネスに適した環境を整えることで経済活性化を図り、財政再建を加速させたい考えだ。しかし、法案にはオブリー元社会党第一書記をはじめとする党内左派の有力議員が相次いで反対を表明しており、年明けに予定されている議会での法案審議は紛糾が予想される。米調査会社ユーラシア・グループのアナリスト、クルムミュラー氏は、政府は左派勢力の抵抗に妥協せざるを得ず、「改革は内容が薄められることになるだろう」との見方を示している。