欧州司法裁判所の法務官は14日、欧州中央銀行(ECB)が重債務国の国債を無制限で買い入れることは合法とする見解を示した。法務官見解に法的拘束力はないが、欧州裁は同判断を踏襲するのが慣例となっており、数カ月後に下される正式な判決で国債買い入れが容認されるのは確実。これによってECBがデフレ回避策として検討している量的緩和の実施に向けた法的な障害は事実上なくなった。
ECBは2010年5月から、ギリシャの信用不安で動揺した金融市場を支えるため、重債務国の国債を流通市場で買い取る「証券市場プログラム(SMP)」と呼ばれる異例の措置を開始。さらに12年9月、信用不安がイタリア、スペインに飛び火したため、SMPに代わる買い入れ拡大措置として、「アウトライト・マネタリー・トランザクション(OMT)」を実施する方針を打ち出した。流通市場で期間1~3年の国債を上限を設けず、利回りが適正水準に下がるまで買い入れるというものだ。
OMTは計画を発表しただけで金融安全弁となって信用不安が沈静化したため、実際には行われなかった。しかし、ドイツの政治家からがECBによる国債の無制限購入は重債務国の放漫財政を助長するもので、EU基本条約に定められたECBの権限を逸脱するとして反発し、ドイツの連邦憲法裁判所に提訴。憲法裁は14年2月、欧州裁に同案件を付託していた。
欧州裁のクルーズ・ヴィラロン法務官は、ECBは国債買い入れの必要性を説明しなければならないと前置きしながらも、同措置は「EU基本条約によってECBに与えられた権限に基づく金融政策の枠内にある」として、合法との判断を示した。
ECBが検討している量的緩和での国債買い取りはデフレ回避・景気浮揚が目的で、買い取り対象となる国債の発行国に厳しい財政緊縮策の実施を求めるOMTと異なる。それでも、OMTをめぐる訴訟で違法判決が下されたり、実施に厳しい条件がつくと量的緩和に影響しかねないとして、成り行きが注目されていた。ユーロ圏のインフレ率が12月にマイナスとなり、デフレ懸念が強まる中、市場では法的問題が解消されたことでECBが22日に開く定例政策理事会で国債買い取りの実施を決めるとの見方が広がっている。