欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/1/19

EU産業・貿易

GM作物栽培で加盟国に禁止権限、欧州議会が法案可決

この記事の要約

欧州議会は13日、遺伝子組み換え(GM)作物の認可ルールをめぐり、EUが栽培を認可した場合でも加盟国が独自の判断で禁止できるようにする指令の改正案を賛成480、反対159の賛成多数で可決した。GM作物に対するEU市民の根 […]

欧州議会は13日、遺伝子組み換え(GM)作物の認可ルールをめぐり、EUが栽培を認可した場合でも加盟国が独自の判断で禁止できるようにする指令の改正案を賛成480、反対159の賛成多数で可決した。GM作物に対するEU市民の根強い懸念に配慮して、加盟国に最終的な決定権を与えたうえで、安全性が確認された品種については速やかに域内での栽培認可プロセスを進めるのが狙いで、今春に施行する。

GM作物の栽培認可をめぐる協議では、加盟国の立場の違いから特定多数決による採決では決着がつかず、安全性が確認された品種については最終的に欧州委員会が認可を勧告する形がとられている。現時点で域内での栽培が認められているGM作物は米モンサントが開発した害虫抵抗性のトウモロコシ「MON810」のみだが、実際に栽培されているのはスペインとポルトガルの2カ国にとどまっている。さらにフランスでは昨年5月、EUが将来的に認可する品種を含め、国内でのGM作物の栽培を全面的に禁止する法案が成立。一方、一般裁判所は3年前、GM作物の栽培認可に関する議論が不当に長期化している状態はEU法に違反するとの判断を示しており、EUレベルで認可手続きの見直しが進められてきた。

今回可決された改正案によると、加盟国は安全性や環境への影響分析以外に、倫理面や社会経済的な根拠に基づいて独自にGM作物の栽培を禁止または制限することが認められる。EUで認められたGM作物の国内栽培の禁止・制限を望む加盟国は、その作物の開発企業の同意を得ることが求められるが、企業側の同意が得られない場合には、一方的に栽培を禁止・制限することができる。また、GM作物を栽培する際には他の作物を汚染することがないよう、特に国境を越えた汚染を防止するため、「緩衝地帯」を設けるなどの対策が求められる。

改正案の可決を受け、バイテク企業の業界団体であるヨーロッパバイオは、加盟国が「非科学的な根拠」に基づきGM作物の栽培を禁止できるようになったと指摘。「欧州のイノベーションを阻害する」と懸念を示した。一方、環境保護団体フレンズ・オブ・ジ・アースは、一般市民は一貫してGM作物に反対を表明してきた強調。「この新法は完璧ではないものの、政府がGM作物栽培に扉を閉ざすことを可能にし、農業をより持続可能な方向性へとシフトさせるものだ」と評価した。