欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/2/9

EUその他

EU-ETS改革、市場安定化準備制度めぐる議論が山場に

この記事の要約

EUが地球温暖化対策の柱と位置付ける排出量取引制度(EU-ETS)の改革案をめぐり、欧州委員会のシェフチョビチ副委員長(エネルギー同盟担当)は4日、加盟国と欧州議会の間でそれぞれ合意に近づいているとの認識を示した。 EU […]

EUが地球温暖化対策の柱と位置付ける排出量取引制度(EU-ETS)の改革案をめぐり、欧州委員会のシェフチョビチ副委員長(エネルギー同盟担当)は4日、加盟国と欧州議会の間でそれぞれ合意に近づいているとの認識を示した。

EU-ETSでは2027年までにオークションによる排出枠の有償割当に全面移行することが決まっているが、ユーロ危機に伴う景気低迷で企業の生産活動が停滞し、排出枠に膨大な余剰が生じた結果、排出権価格はピーク時の約4分の1以下の1トン当たり7ユーロ台で推移している。排出権価格を下支えするため、昨年3月以降、「バックローディング(排出枠の入札延期)」と呼ばれる措置が実施されたが、長期的にみると排出権価格は20年までに1トン当たり4ユーロ程度まで下落するとの見方がある。

こうした中で欧州委は昨年1月、2030年に向けた気候変動・エネルギー政策の枠組みをまとめ、同年までに温室効果ガス排出量を1990年比で40%削減するなどの目標を発表。具体策の1つとして、EU-ETSの第4フェーズがスタートする21年以降、年間排出量の上限の削減比率を現行の1.74%から2.2%に引き上げると共に、「市場安定化準備制度」を導入して排出枠の需給バランスを図る構想を打ち出した。これは経済活動の停滞に伴って発生した余剰排出枠を一旦リザーブ(積み立て)しておき、需給がひっ迫した場面で取り崩して排出権価格を安定させる仕組みだ。

欧州委の提案に対し、英国、フランス、ドイツなどは低炭素社会への転換を推進するため、市場安定化準備制度の導入を17年に早めるべきだと主張している。一方、依然として石炭への依存度が高いポーランドは同制度の早期導入に強く反対しており、欧州議会でも同様の対立構造がみられる。先月には欧州議会産業委員会でEU-ETSの改革案について採決を行ったが、準備制度の導入時期をめぐって意見が分かれ、合意に至らなかった。

シェフチョビチ副委員長は4日の記者会見で「排出権取引市場の改革案について合意に近づきつつある」と発言。最大の焦点となっている市場安定化準備制度をめぐる議論が山場を迎えていることを明らかにした。

欧州議会では今月24日の環境委員会で、EU-ETS改革案についての採決が予定されている。