欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/2/23

EU産業・貿易

欧州委が「資本市場同盟」構想発表、企業の資金調達を支援

この記事の要約

欧州委員会は18日、2019年までに域内の資本市場を統合し、企業が資金調達しやすい環境を整える「資本市場同盟」の構想を発表した。EU全体で資本市場を強化して、とくに中小企業への投資を促進し、経済の活性化と雇用創出につなげ […]

欧州委員会は18日、2019年までに域内の資本市場を統合し、企業が資金調達しやすい環境を整える「資本市場同盟」の構想を発表した。EU全体で資本市場を強化して、とくに中小企業への投資を促進し、経済の活性化と雇用創出につなげるのが狙い。5月13日まで意見募集を行い、結果を踏まえて夏をめどに実現に向けた行動計画をまとめる。

欧州では資本市場が発達している米国と比べて企業金融における銀行貸出の比率が高いため、先の金融危機では信用収縮によって企業の資金調達に困難が生じ、域内経済に深刻な影響が及んだ。こうした反省を踏まえ、資金調達における銀行への依存度を低減させ、調達源を多様化するための政策を検討するなかで、競争力のある単一の資本市場の確立を目指す資本市場同盟の構想が生まれた。

欧州委は議論のたたき台となる「グリーンペーパー」で、資本市場同盟の実現に向けて取り組むべき課題として、国境を越えた投資を妨げる規制の撤廃や、金融サービス分野における統一ルールの策定などを挙げている。このなかには企業が有価証券の売り出しに際して投資家に提出する目論見書に関する規定を見直し、申請や承認手続きを簡素化して資金調達を円滑化することや、証券化の手法を活用した資金調達を推進するため、「高品質」な証券化商品の基準を定めて透明性を高めることなどが盛り込まれている。さらに中長期の取り組みとして、国境をまたいで活動する投資ファンドの設立・運用コストの低減、EU各国の税制や証券法、破産法などの調和、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ市場の育成などを掲げている。

欧州委の試算によると、仮にEUのベンチャーキャピタル市場が米国と同程度まで発達していれば、域内の企業は金融危機が発生した08年からの5年間に900億ユーロ以上の資金調達が可能だったとされる。同委のヒル委員(金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当)は「われわれが進むべき方向は明確だ。単一の資本市場を確立するため、障害を特定して1つずつ取り除いていく必要がある。ローマ条約から50年以上の時を経て、EUが掲げる基本理念の1つである自由な資本移動を実現するチャンスを捉えなければならない」と語った。