欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/2/23

EUその他

国際ローミング料上乗せ廃止、一部の加盟国が延期を要求

この記事の要約

EUは通信分野における単一市場の創設を目的とした規制改革の一環として、域内の他の国で携帯電話を使用する際のローミング(相互接続)にかかる上乗せ料金を廃止することをめぐり、加盟国の足並みの乱れが生じてきた。欧州議会は昨年4 […]

EUは通信分野における単一市場の創設を目的とした規制改革の一環として、域内の他の国で携帯電話を使用する際のローミング(相互接続)にかかる上乗せ料金を廃止することをめぐり、加盟国の足並みの乱れが生じてきた。欧州議会は昨年4月、今年12月までに国際ローミングの上乗せ料金を廃止し、国内料金と同一水準にする新たな規制案を可決したが、一部の加盟国からは実施を18年以降とすべきだとの声が上がっている。欧州委員会のアンシプ委員(デジタル単一市場担当)はできるだけ早い時期に新規制を導入する必要があるとの考えを示し、加盟国に対して調整を急ぐよう求めている。

EUでは2007年6月に「携帯電話のローミングに関する規則」が制定され、域内の他の国で音声通話、ショートメッセージサービス(SMS)、データ通信を利用する際のローミング料金が段階的に引き下げられている。これまでに実施された規制により、EU域内での国際ローミングにかかる上乗せ料金は、初めて料金規制が導入された07年に比べて80~90%引き下げられた。しかし、欧州委員会はさらに事業者間の公正な競争を促進して消費者に低価格で質の高いサービスを提供するため、16年末までに国際ローミングにかかる上乗せ料金を廃止し、国内と同一水準にすることを事業者に義務づける規制案を提示。欧州議会は実施期限を1年早めて15年12月15日とする修正案を可決し、現在、加盟国の間で検討が進められている。

ロイター通信によると、閣僚理事会では新たに、1日のデータ使用量が5メガバイト(MB)に達するまでは国際ローミングにかかる料金を国内と同じ水準に抑え、基準を超えた場合は事業者が他社のネットワークに回線を接続する際に支払うホールセール料金を上限として、利用者に上乗せ料金を請求できるシステムの導入が検討されている。5MBは電子メール(添付ファイルなし)で約250通分に相当する。

アンシプ委員はロイターの取材に対し、「国際ローミングの上乗せ廃止に向けて加盟国が十分に野心的でないことを懸念している」と発言。閣僚理の提案については「交渉のチャンスを与え、できるだけ早くEU市民と域内の企業に具体的な成果を示す必要がある」と述べるにとどめ、欧州委としての見解には触れなかった。