欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/5/5

EUその他

ロシアがEUをWTO提訴、エネルギー関連法めぐり

この記事の要約

ロシアはEUのエネルギー関連法によって域外の電力・ガス事業者が差別的な扱いを受けているとして、世界貿易機関(WTO)にEUを提訴した。WTOが1日、ロシア側から4月30日付でEUとの協議要請があったことを明らかにした。 […]

ロシアはEUのエネルギー関連法によって域外の電力・ガス事業者が差別的な扱いを受けているとして、世界貿易機関(WTO)にEUを提訴した。WTOが1日、ロシア側から4月30日付でEUとの協議要請があったことを明らかにした。

ロシアが問題にしているのは、EUがエネルギー市場の自由化を目指して2009年に制定した「第3次エネルギーパッケージ」。同法令にはエネルギーの生産・供給事業と輸送事業の分離を定めた条項が含まれており、電力・ガス生産を手掛ける大手企業による輸送網の保有・運営を厳しく制限している。ロシアの国営ガス会社ガスプロムは欧州企業によるパイプラインへのアクセスを認めざるを得ない状況に置かれてシェア低下を余儀なくされており、ロシア側はこうしたEUの法令が域外の事業者に差別的で、国際貿易協定に違反していると批判している。

EUとロシアの間では、ウクライナ情勢をめぐり緊張が高まっている。このためWTOへの提訴は米国と連携してロシアに対する制裁を強化しているEUへの対抗措置との見方も出ている。しかし、ロシア政府高官は「WTOルールに基づいて、予測可能な天然ガス輸出の環境を整えることがEUとの協議を要請した狙いだ」と述べ、ウクライナ情勢との関連性を否定した。

WTOの規定により、EUとロシアは今後30日以内に協議を行い、60日以内に解決しない場合は紛争処理小委員会(パネル)が設置される可能性がある。