欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/5/5

EUその他

金融取引税導入めぐる訴訟、英が敗訴

この記事の要約

英国が独、仏などEU11か国による金融取引税(FTT)導入を不当として提訴している問題で、欧州司法裁判所は4月30日、訴えを却下する判決を下した。現時点でFTTの詳細が固まっていないことから、提訴は「時期尚早」と判断した […]

英国が独、仏などEU11か国による金融取引税(FTT)導入を不当として提訴している問題で、欧州司法裁判所は4月30日、訴えを却下する判決を下した。現時点でFTTの詳細が固まっていないことから、提訴は「時期尚早」と判断した。

「トービン税」と称されるFTTのEUでの導入は、金融危機の元凶となった投機的な取引の抑制と、経営危機に陥った銀行を公的支援するための財源を銀行業界に前もって負担させるのが目的。加盟国のうち9カ国以上が法案などに賛同すれば、それらの国だけで先行して実施することを認めるEU基本条約の規定に基づき、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなど11カ国が導入することを決め、昨年1月のEU財務相理事会で承認された。英国は金融主権を重視する立場から同制度に反対し、参加を見送った。

欧州委員会が昨年2月に発表した案は、株式・債券取引に0.1%、デリバティブ(金融派生商品)取引に0.01%の率で課税するという内容。11カ国以外での金融取引であっても、取引される金融商品が11カ国で発行されたものであれば課税対象とする。例えば、同制度に参加しない英国で仏国債が売買された場合も課税される。

これについて英政府は、非導入国の取引にも課税する「域外適用」に法的問題があるとして、昨年5月に提訴した。しかし、欧州裁は、詳細が決まっていないFTTの法的問題を現時点で問うことはできないとして、訴えを退けた。これを受けて英政府は、11カ国がFTT導入の具体案で最終合意してから、改めて提訴する構えを示している。

EUの金融制度改革をめぐっては、英政府は2012年11月に導入された株式、債券の空売り規制と、今年1月に導入された域内銀行の賞与(ボーナス)規制も問題視して提訴した。うち空売り規制をめぐる訴訟で1月に敗訴したばかり。これに続いて、EUによる改革の阻止に失敗した形となる。

一方、FTT導入を主導するフランスとドイツは、5月に実施される欧州議会選挙に先立つ最終合意を目指しているが、関係国による調整は難航している。