欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/3/16

EU産業・貿易

EUの大型投資計画、加盟国が制度設計で合意

この記事の要約

EU28カ国は10日に開いた財務相理事会で、欧州委員会が域内の景気浮揚策の柱として打ち出した大型投資計画の制度設計で合意した。これによって同計画は目標とする今夏の実施に向けて前進した。 この投資計画は、昨年11月に発足し […]

EU28カ国は10日に開いた財務相理事会で、欧州委員会が域内の景気浮揚策の柱として打ち出した大型投資計画の制度設計で合意した。これによって同計画は目標とする今夏の実施に向けて前進した。

この投資計画は、昨年11月に発足した新欧州委員会のユンケル委員長が主導してまとめたもの。加盟国の財政ひっ迫で公共投資が縮小する中、民間資金を活用して投資プロジェクトを推進し、景気を浮揚する狙いがある。

柱となるのが、EU加盟国と欧州投資銀行(EIB)が拠出して創設する「欧州戦略投資基金(EFSI)」。210億ユーロの同基金を元手に、EIBが市場で資金を集めて630億ユーロまで増強するほか、投資リスクの一部を基金が保証することで民間からの投資を呼び込み、2015~17年の3年間で総額3,150億ユーロの投資を行うという仕組みだ。交通、エネルギー、通信、教育、研究開発などのインフラ整備プロジェクトが対象となる。

加盟国は昨年末の首脳会議で計画の大枠を承認していた。今回の財務相理事会で合意したのはEFSIの詳細。欧州委は元手の210億ユーロを加盟国に直接拠出させ、これをプールしてEU全域の投資プロジェクトに投入したい考えだった。しかし、加盟国側は国外で実施される事業に自国の公的資金が活用されることに難色を示し、各国の政府系開発銀行を通じて国内のプロジェクトに拠出することになった。

投資対象となる事業は、EFSIを運営するEIBが経済効果を基準に選定することになっており、加盟国が提出した約2,000件、総額1兆3,000ユーロ相当の候補プロジェクトのリストから絞り込む作業を行っている。加盟国は自国の事業が対象に含まれるとは限らないことから、拠出を同方式に変更することを決めた。

同投資計画をめぐっては、ドイツ、フランス、スペインが各80億ユーロの拠出を表明済み。10日にはイタリアが同額を拠出する方針を打ち出した。

この制度設計は欧州議会による承認が必要。欧州委のカタイネン副委員長(雇用・成長・投資・競争政策担当)は同日、6月または7月までに承認手続きが完了し、EFSIが始動するとの見通しを示した。ただ、この拠出方式は西欧の主要国に有利で、中東欧諸国のプロジェクトに資金が十分に行き渡らないとの懸念が指摘されており、欧州議会で問題となる可能性がある。