欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/3/16

EU産業・貿易

欧州議会がトラック設計変更の新ルール可決、安全性と環境性向上へ

この記事の要約

欧州議会は10日の本会議で、貨物トラックの安全性と環境性能の向上を目的とする新たなEU指令案を賛成多数で可決した。トラックの車体に空気力学に基づく形状デザインを認めることや、重いバッテリーを必要とするハイブリッド車などの […]

欧州議会は10日の本会議で、貨物トラックの安全性と環境性能の向上を目的とする新たなEU指令案を賛成多数で可決した。トラックの車体に空気力学に基づく形状デザインを認めることや、重いバッテリーを必要とするハイブリッド車などの普及を図るため、車両総重量の上限を引き上げることなどを柱とする内容。EU加盟国の正式承認を経て、早ければ2018年から段階的に新ルールに沿ったデザインのトラックが市場に投入される見通しだ。

EU市場で販売されるすべてのトラックは、1996年に制定された「重量物運搬車の重量と寸法に関する指令」に基づいて設計されており、域内では車体全体が「四角い」トラックが走行している。欧州委員会は2013年4月、空気力学の観点からより安全で燃費性能に優れた貨物トラックの設計を可能にするため、現行ルールの見直しを提案。加盟国と欧州議会で新たな指令案について検討を進めていた。

新ルールが導入されると、四角いキャビンに丸みをもたせることが可能になり、運転席の視野が広がって衝突事故や、歩行者や自転車の巻き込み事故などを減らすことができる。また、車体後部にフラップ(高揚力装置)を装備することで空気抵抗が減り、燃費が向上して温室効果ガスの排出削減につながる。欧州委によると、空気力学に基づくデザインの長距離トラックは、従来型のトラックに比べて燃料消費量を7~10%減らすことが可能で、たとえば年間走行距離が10万キロのトラックの場合、年間5,000ユーロの燃料費を節約できるという。

一方、車両総重量の上限を引き上げることで、ハイブリッド車や電気自動車用の重いバッテリーやエンジンを搭載しやすくなり、環境対応型トラックの普及が進む見通し。ただし、積載量は現在の上限が維持され、加盟国は過積載による事故や道路インフラの早期劣化を防止するため、車載計量システムの搭載を義務づけるなど、必要な措置を講じて監視体制を強化しなければならない。

このほか陸・海・空をまたぐ効率的な複合輸送を促進するため、国際海上コンテナの国際規格である45フィートコンテナの積載車について、コンテナの積み下ろしを容易にするため車両寸法の制限を緩和することなどが指令案に盛り込まれている。