欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/4/13

EU産業・貿易

欧州委が南欧4カ国の調査検討、銀行の繰延税金資産の取扱めぐり

この記事の要約

欧州委員会は7日、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペインの4カ国が、銀行の繰延税金資産に対する保証を与えていることが違法な国家補助に当たるかどうか調査することを検討していることを明らかにした。 繰延税金資産は税効果会計 […]

欧州委員会は7日、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペインの4カ国が、銀行の繰延税金資産に対する保証を与えていることが違法な国家補助に当たるかどうか調査することを検討していることを明らかにした。

繰延税金資産は税効果会計で使用される勘定科目で、将来の課税所得の発生に伴う法人税等の支払額を減額する効果を有する。同資産は資本性が脆弱であるとされ、国際的な自己資本規制「バーゼルⅢ」では、2018年までに中核的自己資本から段階的に控除することが義務付けられている。

欧州委は、4カ国が銀行の繰延税金資産の一部を政府が裏付ける税額控除に転換し、中核的自己資本に組み入れることを容認していることを問題視。4カ国の当局に対して繰延税金資産の取扱いに関する情報提供を求める書簡を送った。欧州委の報道官は会見で、「EUのルールでは繰延税金資産を中核的自己資本に組み入れることは認められておらず、19年までに中核的自己資本から段階的に差し引くことを義務付けている」と指摘。一方で、銀行が繰延税金資産を利用して自己資本を押し上げることが直ちに違法な国家補助に当たるかについては明確な規定がなく「我々が見極めようとしているのは、まさにその点だ」と述べた。

英紙『フィナンシャル・タイムズ』が、欧州中央銀行(ECB)の統計をもとに伝えたところによると、4カ国全体の繰延税金資産は400億ユーロ超にのぼるという。