欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/4/27

総合 – 欧州経済ニュース

ギリシャ金融支援問題、期限内に合意できず

この記事の要約

ユーロ圏19カ国は24日にラトビアの首都リガで財務相会合を開き、ギリシャの金融支援問題について協議したが、支援延長の条件となる財政改革をめぐって折り合えず、合意の期限となっている4月末までに決着できないことが確実となった […]

ユーロ圏19カ国は24日にラトビアの首都リガで財務相会合を開き、ギリシャの金融支援問題について協議したが、支援延長の条件となる財政改革をめぐって折り合えず、合意の期限となっている4月末までに決着できないことが確実となった。これによってギリシャはEUによる新たな融資の実行が5月以降にずれ込み、資金繰りが一段と厳しくなる。

債務危機に陥ったギリシャは2010年から12年にかけて、EUと国際通貨基金(IMF)から総額2,400億ユーロの緊急金融支援を取り付けた。問題となっているのは1,300億ユーロに上る第2次支援のうち、EUによる最後の支援となる72億ユーロの融資。同支援の条件となっている財政緊縮策の放棄を掲げる新政権が1月に発足したことから、EUは融資を凍結している。

EUとギリシャは2月、同月末が期限だった金融支援を4カ月延長することで合意した。ただし、ギリシャが現行の金融支援の枠組みを踏襲し、財政改革などを推進することが条件で、同国は4月末までに詳細な改革案をまとめ、EUの承認を受ける必要があった。

改革案をめぐっては、ギリシャが富裕層への増税、脱税・たばこなどの密輸の取り締まり強化による歳入増といった案を提示しているものの、EUが求める公務員削減などが含まれず、新政権が選挙で公約した最低賃金の引き上げ、貧困層の年金増額など改革に逆行する措置を強行する構えを示していることから、協議の紛糾が続いていた。同日の財務相理事会でも双方の溝は埋まらず、合意に至らなかった。

ギリシャは金融支援問題の難航による先行き不安から、長期国債の利回りが25%を超え、国債発行で資金を調達できない状況にあり、IMFへの融資返済、公務員の給与の支払いに必要な資金がひっ迫している。政府はEUに対して、残る融資の一部を財政改革の最終合意に先立って実施するよう要請しているが、EUは「包括的な合意がなければ、いかなる融資も実行しない」(ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長)と拒否しており、ギリシャに譲歩しない構えだ。このためギリシャ政府は、公共機関の預金を中央銀行がかき集めて財政をやり繰りせざるを得ない状況で、24日に議会が関連法案を可決した。

EUは合意期限を延長し、ギリシャがIMFに多額の債務を返済する期限を迎える前日の5月11日に開かれるユーロ圏財務相会合での合意を目指す。ただ、緊縮路線を進めると国民の反発を招き、政権が揺らぎかねないため、大幅な譲歩が難しいギリシャ政府と、緊縮策継続という原則を曲げないEUとの隔たりは大きい。EU側ではギリシャに対して、EUが同国のデフォルト(債務不履行)を避けるため、いつかは根負けし、最終的に歩み寄るとみて、のらりくらりと交渉を進めているとの疑念も強まっており、新期限までに合意できるか予断を許さない情勢だ。