欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/4/27

総合 – 欧州経済ニュース

EUが密航船対策を強化、予算3倍に

この記事の要約

地中海で移民や難民を乗せた密航船の転覆事故が相次ぎ、多くの犠牲者が出ている問題で、EUは23日に緊急首脳会議を開き対応を協議し、地中海での監視・救助活動を強化することで合意した。活動のための財源を3倍にするとともに、艦船 […]

地中海で移民や難民を乗せた密航船の転覆事故が相次ぎ、多くの犠牲者が出ている問題で、EUは23日に緊急首脳会議を開き対応を協議し、地中海での監視・救助活動を強化することで合意した。活動のための財源を3倍にするとともに、艦船や航空機の投入を増やす。

シリア内戦の激化やアフリカ諸国の政情不安に伴い、地中海を渡って欧州を目指す移民や難民は増加の一途を辿っており、密航船の転覆などの事故や事件による死者数も急増している。19日にリビア沖で発生した転覆事故では800人以上が死亡したと見られ、地中海で過去最悪の惨事となった。同事故を受け、EUは20日に外相と内相による臨時の合同会議を開催。地中海の監視・救助活動の規模拡充や密航ブローカーらの船舶の拿捕や破壊、加盟国の治安関連当局間の連携強化などを柱とする10項目の緊急行動計画をまとめた。。

首脳会議ではこの緊急行動計画をもとに協議を行い、優先すべき対策分野を◇密航業者との戦い◇地中海でのプレゼンス向上◇不法移民の流入阻止する◇加盟国間の連帯と責任の強化――とすることで合意。密航船の監視や難民の救助活動の予算を現在の月300万ユーロから900万ユーロに増額することを決めたほか、英国、フランス、ドイツ、ベルギー、アイルランドが船舶やヘリコプターの提供を申し出た。緊急行動計画に盛り込まれた密航船の捕捉・破壊については、モゲリーニ外務安全保障政策上級代表(外相)軍事作戦も視野に入れた対策を準備するよう要請。また、密航船の出発地となっているリビアの周辺国と協力して違法ブローカーのリビアへの流入を防ぐほか、難民の出身地が多いアフリカ連合や関係国との首脳会議を近くマルタで開催し、対策を協議することも決めた。

首脳会議終了後に記者会見したEUのトゥスク大統領は、「罪のない人びとの命を救うことが最優先事項だ」と強調。「それは海で命を救うことだけでなく、密航業者を取り締まり、密入国を防止することも意味している」と語った。