欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/4/27

EU産業・貿易

GM作物認可ルールで欧州委が新提案、輸入・販売でも加盟国に禁止権限

この記事の要約

欧州委員会は22日、EUが域内への輸入を認可した遺伝子組み換え(GM)作物について、加盟国が自国での流通を禁止できるようにする法案を発表した。GM作物の認可ルールをめぐっては、EUが域内での栽培を認可している場合でも、加 […]

欧州委員会は22日、EUが域内への輸入を認可した遺伝子組み換え(GM)作物について、加盟国が自国での流通を禁止できるようにする法案を発表した。GM作物の認可ルールをめぐっては、EUが域内での栽培を認可している場合でも、加盟国が独自の判断で禁止できるようにする改正指令案が3月に正式承認されている。欧州委はGM作物に対するEU市民の根強い懸念に配慮して、単一の審査基準に基づく認可制度を維持しながら、加盟国により幅広い権限を与える必要があると判断した。法案は今後、欧州議会とEU閣僚理事会で審議される。

GM作物の認可をめぐる協議では、英国、スペイン、オランダなどの推進派とフランスやオーストリアをはじめとする反対派の間で長年にわたる対立が続いており、加盟国による採決では決着がつかず、安全性が確認された品種については最終的に欧州委員会が認可を勧告する形がとられている。現在、58品種のGM作物が主に飼料用としてEU域内への輸入を認められているが、栽培が認可されているのは米モンサントが開発した害虫抵抗性のトウモロコシ「MON810」のみで、実際に栽培されているのはスペインとポルトガルの2カ国にとどまっている。EUの規制に対して米国などが反発を強めるなか、モンサントは仮に認可されてもEU内での商業栽培は実質的に不可能と判断し、2年前に栽培認可を得るための承認申請をすべて撤回した経緯がある。

3月に承認された新ルールによると、EUが認可しているGM作物であっても、自国での栽培を望まない加盟国は社会経済的要因や土地利用に関する政策などの根拠に基づいて、栽培申請の地理的範囲から自国領土の一部またはすべてを除外(オプトアウト)するよう求めることができる。欧州委は今回、加盟国の権限をさらに拡大し、GM作物の流通についてもオプトアウトを適用して、自国での販売を禁止または制限できるようにすることを提案している。

現行の認可制度を維持しながら加盟国に最終的な決定権を与える欧州委のアプローチに対し、環境保護団体や消費者団体と業界側の双方から批判の声が上がっている。国際環境NGOグリーンピースEU支部の代表は、加盟国や欧州議会の多数派がGM作物の認可に反対しても、欧州委が認可の可否を判断できる現行システムを問題視。欧州委は加盟国に「見せかけの権利」を与えようとしているだけで、訴訟に発展した場合は科学的根拠を理由に加盟国側が敗訴するのは明白だと指摘している。一方、欧州農業団体連合会・欧州農協連合会(COPA/COGECA)はただちに声明を発表し、欧州委の提案は「単一市場の原則に反し、EUの農業・食品産業にとって深刻な競争上の不利益を招く」と警告している。