欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/4/27

EUその他

欧州委がガスプロムに異議告知書、中東欧市場の競争阻害で

この記事の要約

欧州委員会は22日、ロシアの国営ガス会社ガスプロムがEU競争法に違反している疑いが強まったとして、同社に異議告知書を送ったことを明らかにした。異議告知書の送付は競争法違反に対する制裁手続きの第1段階となるもので、ガスプロ […]

欧州委員会は22日、ロシアの国営ガス会社ガスプロムがEU競争法に違反している疑いが強まったとして、同社に異議告知書を送ったことを明らかにした。異議告知書の送付は競争法違反に対する制裁手続きの第1段階となるもので、ガスプロムは最終的に“クロ”と判断されれば巨額の制裁を科される。ウクライナ問題をめぐって対立しているEUとロシアの関係が一段と悪化するのは避けられない情勢だ。

欧州委は2012年、ガスプロムが中東欧市場での独占的な地位を乱用し、ガス価格を不当につり上げるなどして、公正な競争を阻害している可能性があるとして、正式な調査を開始していた。異議告知書の送付は調査の結果、同社が競争法に違反しているとほぼ断定したことを意味する。

欧州委によると、問題となっているのはポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア、リトアニア、エストニア、ラトビアの8カ国のガス市場での行為。独占的な地位を悪用し、各国の元売り業者が他の国に再輸出することを禁止したり、購入したガスを特定地域に限って利用することを強制している疑いがある。このほか◇ブルガリアとポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアの5カ国でガス価格を不当につり上げている◇ブルガリアとポーランドで、ガスプロムのパイプライン敷設計画に両国政府が投資するか、国内パイプライン網の同社の支配権強化を認めることを条件にガスを供給している――という問題も指摘している。

ガスプロムは12週間以内に反論する機会を与えられるが、最終的に違反と認定されれば制裁を科される。EUでは競争法違反に対して、対象企業の売上高の最大10%に相当する制裁金支払いを命じることになっており、ガスプロムの制裁額は100億ユーロ程度に達する可能性がある。

ガスプロムは同日発表した声明で、欧州委の指摘に「根拠はない」として、違法行為を否定。ロシア外務省も同社に問題はないとして、EUの対応に反発している。

欧州委は同問題がEUとロシアの関係悪化を増幅させることを恐れ、昨年中に用意していた異議告知書の送付を控えていたが、ついに制裁手続きに踏み切った。欧州委のフェスターガー委員(競争政策担当)は「これは競争問題に関する案件で、政治とは無関係だ」としているが、ロシアとの外交問題に発展するのは必至で、政治決着で妥協を探る動きが出てきそうだ。