欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/4

総合 – 欧州経済ニュース

北キプロスで新大統領誕生、南北統合推進へ

この記事の要約

トルコ系の北キプロス・トルコ共和国でこのほど実施された大統領選挙で、EU加盟国であるギリシャ系キプロス共和国(南キプロス)との統合を提唱する穏健派のムスタファ・アクンジュ氏(67)が当選した。これを受けて南北キプロス統合 […]

トルコ系の北キプロス・トルコ共和国でこのほど実施された大統領選挙で、EU加盟国であるギリシャ系キプロス共和国(南キプロス)との統合を提唱する穏健派のムスタファ・アクンジュ氏(67)が当選した。これを受けて南北キプロス統合交渉が再開される見通しで、約40年間にわたる分断状態の解消に向けた気運が高まってきた。

4月26日に投開票された大統領選では、アクンジュ氏が得票率60.5%となり、現職のエロール大統領を破って新大統領に選出された。投票率は約64%だった。

トルコ軍が1974年にキプロスに侵攻して誕生した北キプロスは国際的に承認されておらず、トルコだけが国家承認している。2004年4月に国連の統合案をめぐる住民投票が実施され、北キプロスが承認したものの、ギリシャ系の南キプロスが否決したため、南キプロスだけが同年5月にEUに加盟。北キプロスは孤立状態にある。

2009年に統合交渉が開始されたが、エロール大統領が対南キプロス強硬派で、統合ではなく南北双方が緩やかに結びつく国家連合の創設を提唱していることなどが障害となり、協議は難航。さらに、新たに発見されたキプロス沖の天然ガス田の開発権をめぐって南キプロスがトルコと対立したことで、昨年10月から交渉は凍結されている。

北キプロスの首都ニコシアの市長を14年間にわたって務めた経歴のあるアクンジュ氏は、南北統合の推進派として知られる人物。国際的孤立からの脱却を望む北キプロス市民は、統合によるEU加盟を目指す同氏を新大統領に選んだ。

アクンジュ新大統領は当選確定後に支持者を前に、「和平合意の達成が優先課題だ。わが国は時間を浪費してはならない」と述べ、統合交渉再開への意欲を表明。南キプロスのアナスタシアディス大統領はアクンジュ氏の新大統領就任を歓迎し、同日に電話で祝福するとともに、近日中に会談することで合意した。統合交渉を仲介する国連も選挙結果を歓迎しており、5月の交渉再開に向けて、準備に入る意向を示している。

南北キプロス統合の実現にはトルコの支持が不可欠となるが、同国は北キプロスがトルコの意向を軽視して南キプロスと急接近することを警戒している。エルドアン大統領は26日、アクンジュ新大統領がトルコを宗主国ではなく“兄弟国“”と称し、対等な関係を要求したことに反発。北キプロスが予算の3分の1をトルコからの援助に頼っていることに触れ、「アクンジュ氏は自身の発言が何を招くかを理解しているのか」と述べ、援助打ち切りを示唆した。このためアクンジュ新大統領は、トルコの合意を取り付けながら統合交渉を進めるという難題に取り組むことになる。