欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/1

EU情報

EUとスイスが脱税対策で新協定、18年から銀行口座情報を自動交換

この記事の要約

欧州委員会は5月27日、厳格な銀行守秘義務で知られるスイスとの間で税の透明性に関する新たな協定に署名したと発表した。脱税対策の一環で、EU加盟国とスイスの税務当局が銀行口座の情報を自動交換できるシステムを構築し、2018 […]

欧州委員会は5月27日、厳格な銀行守秘義務で知られるスイスとの間で税の透明性に関する新たな協定に署名したと発表した。脱税対策の一環で、EU加盟国とスイスの税務当局が銀行口座の情報を自動交換できるシステムを構築し、2018年からの実施を目指す。

スイスでは銀行法で口座情報の漏えいや外部提供が罰則の対象になっており、銀行業界は徹底した顧客情報の守秘で世界の富裕層の運用資産を集めてきた。しかし、国際的に脱税防止の取り組みが強化されて各国からの圧力が高まるなか、従来のような守秘義務の維持は困難と判断。スイス政府は13年、米国人の口座情報を自動的に米内国歳入庁(IRS)に提供させる「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」に同意した。一方、EU加盟国も昨年、17年までに口座情報の自動交換制度を導入することで正式合意し、スイスを同枠組みに取り込むための交渉を進めていた。

欧州委によると、EU加盟国の税務当局は経済協力開発機構(OECD)が定める国際的な基準に基づき、スイスに口座を持つ自国民の氏名、住所、納税者番号、生年月日といった個人情報のほか、配当金やキャピタルゲイン、口座残高などの情報を自動的に入手できるようになり、国境を越えた租税回避を防ぐことが可能になる。ただし、協定の締結にはスイス議会の承認が必要となる。

欧州委のモスコビシ委員(経済金融問題・税制・関税担当)は「今回の協定は、税の透明性に関するEUとスイスの協力関係が新たな段階に入ることを意味する。口座情報の自動交換を通じて脱税者に打撃を与え、欧州全体でより公平な課税を実現できるようになる」とコメントした。

なお、欧州委は現在、アンドラ、リヒテンシュタイン、モナコ、サンマリノともスイスと同様の協定締結に向けて交渉を行っており、年内の合意を目指している。