欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/1

EU情報

アマゾンが欧州で税慣行を変更、欧州委の調査には影響せず

この記事の要約

米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムは5月26日、欧州での売り上げを法人税率の低いルクセンブルクに集約して会計処理する手法を見直し、国ごとに売上高を計上する方式に変更したと発表した。欧州で事業展開する多国籍企業の節税対 […]

米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムは5月26日、欧州での売り上げを法人税率の低いルクセンブルクに集約して会計処理する手法を見直し、国ごとに売上高を計上する方式に変更したと発表した。欧州で事業展開する多国籍企業の節税対策に対する批判の高まりを背景に、税慣行の変更に踏み切った格好で、他社も同様の対応を迫られる可能性がある。ただ、欧州委員会は今回の動きとは関係なく、ルクセンブルクがアマゾンに適用してきた税優遇措置に対する調査を継続する方針を示している。

アマゾンはこれまで、ルクセンブルクに拠点を置く販売子会社「アマゾンEU」に欧州事業の売り上げを集約したうえで、同社が欧州における知的財産管理を専門とする同国内の別会社「アマゾン・ヨーロッパ・ホールディング・テクノロジーズ」に多額のロイヤリティを支払うことで課税対象額を減らし、税負担の軽減を図ってきた。アマゾンの広報担当によると、同社は5月1日から英国、ドイツ、イタリア、スペインでそれぞれ個別に売上高を計上する会計方式に変更しており、近くフランスでも新方式に移行する計画という。ロイター通信は欧州における税慣行の変更に伴い、アマゾンの納税額が最大1億ドル拡大すると試算している。

多国籍企業の課税逃れに対して国際的な批判が高まるなか、欧州委は企業誘致や雇用創出などを目的とするルクセンブルク、アイルランド、オランダの税優遇策が違法な国家補助にあたる可能性があるとして、昨年6月に本格調査を開始した。このうちルクセンブルクがアマゾンに適用してきた租税軽減措置については今年1月、「合法性に疑念がある」との見解を示している。欧州委のカルドソ報道官は今回の動きについて、「アマゾンがグループ内の税構造を見直すのは当然の対応」と指摘。そのうえで「税慣行の変更はアマゾンが過去に受けたであろう優遇策に対する調査になんら影響しない」と述べ、引き続き調査を進める考えを示した。