政府と野党勢力の対立が続くマケドニアで、連立与党と最大野党を含む主要4党は15日、グルエフスキ首相が来年1月に辞任し、4月に総選挙を前倒し実施することなどで合意した。同国では政権中枢の汚職や職権乱用を示唆する盗聴記録が公開されたのをきっかけに、反政府運動が激化していたが、加盟候補国であるマケドニアの政情不安がバルカン諸国に波及する事態を懸念するEUの仲裁で、ようやく正常化の道筋が見えてきた。
マケドニアでは昨年4月の総選挙で与党連合が勝利し、グルエフスキ首相の続投が決まったが、野党は不正操作があったと主張して議会をボイコットした。さらに最大野党・社会民主同盟(SDSM)は今年2月、政権側による不正選挙のほか、汚職や不正な資金管理、反体制派の追放を目的とした刑事事件の捏造などを示す内容の盗聴記録を公開した。政府はこれに対し、盗聴テープは外国の情報機関の協力を得て作成されたもので不正行為の事実はないと反論。グルエフスキ首相はSDSMのザエフ党首がクーデターを企てたなどと主張し、野党との対決姿勢を鮮明にした。
こうしたなか、5月には北部のクマノボで銃撃戦が発生し、警官を含む22人が死亡した。当局がアルバニア系武装勢力を拘束して事態は収束したが、野党側は政府が一連の疑惑をかわすために民族間の争いがくすぶる北部で衝突を起こしたと非難。退陣を求める反政府派と政権支持派がそれぞれ抗議デモを展開するなど国内の緊張が高まるなか、EUや米国の仲介で与野党間の協議が行われていた。
グルエフスキ首相率いるマケドニア民主党(VMRO-DPMNE)やSDSMなど4党の党首が署名した合意文書によると、現政権は来年1月初めまでに退陣し、暫定政府が4月24日の総選挙まで国政の舵取りを担う。一方、SDSMは議会のボイコットを中止して9月から審議を再開し、副首相のほか内務、社会政策など一部閣僚ポストの候補者を選定する。さらに、9月15日までに盗聴記録について事実関係を検証する特別検察官を任命することも合意文書に盛り込まれた。
グルエフスキ首相は会見で「政治的危機は解消された」と強調。一方、SDSMのザエフ党首は「ようやく首相が辞任要求を受け入れた。現政権が次期総選挙を仕切ることはなくなった」と述べた。