欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/8/3

EU情報

フェデックスのTNT買収計画、欧州委が本格調査に着手

この記事の要約

欧州委員会は7月31日、米物流大手フェデックスがオランダの同業TNTエクスプレスを買収する計画について、EU競争法に基づく調査を開始したと発表した。両社の取引を認めた場合、域内の多くの市場で国際小口輸送を展開する企業が2 […]

欧州委員会は7月31日、米物流大手フェデックスがオランダの同業TNTエクスプレスを買収する計画について、EU競争法に基づく調査を開始したと発表した。両社の取引を認めた場合、域内の多くの市場で国際小口輸送を展開する企業が2~3社となり、公正な競争が阻害される可能性があると判断した。欧州委は買収計画を精査し、12月8日までに結論をまとめる方針を示している。

フェデックスは今年4月、TNTを48億ユーロで買収することで合意したと発表。6月末に欧州委に計画の承認を申請した。

欧州委によると、欧州市場では現在、フェデックスとTNTにドイツポスト傘下のDHLと米UPSを加えた4社が世界各国に航空および陸上輸送ネットワークを持ち、集荷から配送までドアツードアの小口輸送サービスを提供する「インテグレーター」として事業展開している。フェデックスによるTNTの買収が実現した場合、欧州ではインテグレーターが3社に減ることになるため、欧州委はすでに大手による寡占化が進んでいる同分野でさらに市場集中度が高まり、競争環境が確保されずに価格上昇などの弊害を招く事態を警戒している。

欧州委のヴェスタエアー委員(競争政策担当)は声明で「多くのビジネス、特に電子商取引などの分野では、消費者と事業者の双方が低価格で信頼できる宅配サービスに強く依存している。したがって欧州委はフェデックスによるTNT買収が公正な競争を妨げ、価格の上昇を招く恐れがないか精査する必要がある」とコメントしている。

TNTをめぐっては、2012年に米UPSによる買収が合意に至ったが、欧州委は13年、域内の多くの市場で公正な競争が阻害されると結論づけ、計画を阻止した経緯がある。