欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/8/31

EU情報

ネオニコチノイド、ミツバチに「深刻なリスク」=FESA

この記事の要約

欧州食品安全機関(FESA)は26日、ミツバチの大量死や大量失踪の主な原因とされるネオニコチノイド系農薬3種のリスク評価報告書を公表した。EUでは2年前からミツバチを誘引する植物へのネオニコチノイド系農薬の使用が原則とし […]

欧州食品安全機関(FESA)は26日、ミツバチの大量死や大量失踪の主な原因とされるネオニコチノイド系農薬3種のリスク評価報告書を公表した。EUでは2年前からミツバチを誘引する植物へのネオニコチノイド系農薬の使用が原則として禁止されている。FESAは規制対象になっている農薬の散布がミツバチに深刻なリスクをもたらすことが確認されたとし、「EUの農業部門に数十億ユーロの価値をもたらすミツバチおよび他の花粉媒介生物の保護が緊急の課題だ」と指摘している。

ネオニコチノイド系農薬は近年、世界各地で深刻化しているミツバチが突然大量に失踪する「蜂群崩壊症候群」との関連性が指摘されている。FESAは2012年に欧州委員会の要請で、ネオニコチノイド系農薬のうちクロチアニジン、イミダクロおよびチアメトキサムについてミツバチへの影響を調査。蜂群崩壊症候群との関連性については「十分なデータがない」として結論を見送ったものの、ネオニコチノイドはミツバチの中枢神経系に作用して麻痺や死をもたらすとの分析結果をまとめた。欧州委はこれを受け、EFSAがミツバチへの悪影響を指摘した農薬3種について、13年7月からミツバチを誘引するトウモロコシ、ナタネ、ヒマワリ、ワタなどへの使用を禁止し、2年後に見直しを行うことを決めた。

FESAによる今回のリスク評価は、現行規制の見直しを進めるうえで土台となるもの。オニコチノイド系農薬がミツバチ以外の花粉媒介生物(鳥や昆虫など)に及ぼす影響も懸念されるなか、FESAはこの点については「深刻な情報不足」のためリスク評価の完了にはなお時間を要すると説明している。

欧州委はFESAの報告書を受け、「予防的措置として厳格な規制を導入した2年前の判断は正しかったことが証明された」とコメントしている。一方、環境保護団体グリーンピースは、今回の調査を通じてミツバチへの深刻な影響が決定づけられたと指摘。欧州委に対し、規制を強化してすべての作物へのネオニコチノイド系農薬の使用を禁止するよう求めている。