スズキと独フォルクスワーゲン(VW)の提携解消をめぐる係争で、ロンドンの国際商業会議所国際仲裁裁判所がVWに対し保有するスズキ株の速やかな売却を命じたことがこのほど分かった。これを受けてスズキは、VWから自社株19.9%を買い戻す。同仲裁裁は同時に、スズキが契約に違反したとするVWの主張も認めており、両社は今後、同契約違反に基づく損害の有無および額について引き続き仲裁で審議していく。
両社は2009年12月に包括提携し、VWはスズキ株19.9%、スズキはVW株1.5%をそれぞれ取得した。スズキは環境技術開発の加速などを狙い、VWはスズキが持つ小型車分野のノウハウとインド市場における強みに強い期待をかけていた。
だが、VWがスズキを「財務的、経営方針上、重大な影響を与えることができる」会社と位置付けたことから、独立性を重視するスズキが反発。両社の協力関係は足踏み状態へと陥った。
こうした状況を受けスズキはVWへの提携解除を通告していなかった11年6月の時点で、ハンガリー工場で生産するモデル向けのディーゼルエンジンを伊フィアットから調達することを決定。VWはこれに対し、スズキの行為は契約違反だとして是正を要求したが聞き入れられなかった。
スズキも同9月、対等なパートナーシップを求める同社の要求をVWが受け入れなかったとして提携解除とスズキ株の返還を申し入れた。これが拒否されたため、11月に同仲裁裁への提訴に踏み切った。今回の仲裁では両社の提携についてもスズキの解消通告により12年5月18日付で解消されたとの判断が示された。
VWはスズキ株19.9%を約18億ユーロで取得した。同株の時価は現在、およそ34億ユーロに拡大したおり、VWは巨額の売却益を確保できる見通しだ。