欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/10/5

EU情報

EUが路上走行での排ガス試験導入へ、業界団体はVW問題受けた規制強化を警戒

この記事の要約

EUは1日、競争政策担当相による理事会を開いて独フォルクスワーゲン(VW)による排ガス規制逃れの再発防止策を協議し、排ガス試験を厳格化することで一致した。従来からの実験室での試験に加え、2017年秋までに実際の路上走行に […]

EUは1日、競争政策担当相による理事会を開いて独フォルクスワーゲン(VW)による排ガス規制逃れの再発防止策を協議し、排ガス試験を厳格化することで一致した。従来からの実験室での試験に加え、2017年秋までに実際の路上走行に近い状態で排ガスを測定するための検査体制を整備するという内容。欧州委員会が11月の次回会合までに詳細を詰める。

閣僚理には各国の産業、経済、貿易分野の担当相らが出席した。欧州委員会のビェンコフスカ委員(域内市場・産業担当)は会議後の会見で「現時点でVW以外のメーカーが不正に関与していたことを示す証拠はないが、欧州で排ガス試験が適正に行われていることを確認しなければならない。加盟国は排ガス試験を早急に厳格化する必要があるとの意見で一致している」と発言。次回会合までに欧州での不正の実態を把握して市場への影響を分析し、必要な対策について協議する考えを示した。

一方、欧州自動車業界は、VWの不正問題を契機とした規制強化の流れが競争力の低下につながりかねないとして警戒感を強めている。欧州自動車工業会(ACEA)の会長を務める仏ルノーのカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は、1日の閣僚理に先立ってEU首脳宛てに書簡を送り、ディーゼル車をエコカーの柱と位置づける欧州自動車業界の戦略に深刻な影響が及ぶような「行きすぎた規制」を導入しないよう求めた。

英紙フィナンシャル・タイムズが入手した書簡でゴーン会長は、VW以外のメーカーも違法ソフトを使って排ガス規制を逃れていたのではないかとの疑惑に対し、VWのような「大規模な不正」に関与した事実はないと言明。「各メーカーは巨額の資金を投じて燃費性能に優れ、二酸化炭素(CO2)排出量の少ないディーゼル車の開発を進めてきた」としたうえで、「業界として排ガス試験を厳格化する必要性は認識しているが、欧州で1,210万人を雇用する自動車産業の競争力低下につながるような施策は回避しなければならない」と強調している。

同会長はさらに、EUが17年秋から実際の走行状態での排ガス試験を導入する方針を打ち出している点について、新たな試験方法に対応するには「ハードウェアの大幅な変更」が必要になるため、すべての車種で窒素酸化物(NOx)排出量の削減が可能になるのは19年秋以降になると説明している。