欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/10/26

EU情報

加盟国の税優遇措置は「違法な国家補助」、スタバとフィアットに追徴課税

この記事の要約

欧州委員会は21日、米大手コーヒーチェーンのスターバックスと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズの金融子会社に対する税優遇措置が違法な国家補助にあたるとの判断を示し、優遇を認めていたオランダとルクセン […]

欧州委員会は21日、米大手コーヒーチェーンのスターバックスと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズの金融子会社に対する税優遇措置が違法な国家補助にあたるとの判断を示し、優遇を認めていたオランダとルクセンブルクに追徴課税するよう命じた。追徴額はそれぞれ2,000万~3,000万ユーロに達する見通しだ。多国籍企業による租税回避を認めない姿勢を強く打ち出したもので、並行して進めている米アップルや米アマゾン・ドット・コムなどに対する調査にも影響しそうだ。

多国籍企業による課税逃れに対して国際的に批判が高まるなか、欧州委は一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、特定の企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助規定に違反している可能性があるとして、2014年6月に本格調査を開始。スターバックスに対するオランダと、フィアット・ファイナンス・アンド・トレードに対するルクセンブルクの措置が調査対象に含まれていた。

欧州委によると、スターバックスはコーヒー豆の焙煎や関連製品の製造を手がけるオランダの子会社が2008年に税務当局と課税措置に関する取り決め(タックスルーリング)を交わし、納税額を低く抑える手法を導入していた。具体的には英国のグループ企業Alkiに焙煎技術に関する多額のライセンス料を支払うほか、スイスの系列会社から調達するコーヒー豆の仕入れ価格を相場の3倍近い水準に設定し、人為的に利益を低く抑えて不当に税負担を減らしていたとされる。

一方、フィアットの金融子会社は12年にルクセンブルク当局と結んだ取り決めに基づき、資本金を実際より少なく見積もるなどして税負担を減らす優遇措置を受けていた。欧州委によると、一連の措置により同社の課税所得は実際の20分の1程度に抑えられていたという。

欧州委のヴェスタエアー委員(競争政策担当)は記者会見で「事業規模の大小にかかわらず、加盟国の税務当局は特定の企業に対して競争を損ねる不当な優遇措置を与えてはならない」と強調。今回の決定は「すべての企業は公正に税を負担すべきだとの明確なメッセージだ」と述べ、アップルやアマゾンなどに対する優遇措置についても厳しく追及する意向を示した。

欧州委の決定を受け、スターバックスはただちに法的手段に訴える方針を表明した。オランダ当局も欧州委の判断には「重大な誤り」があるとし、スターバックスに適用した措置は「国際的に認められている手法だ」と反論。ルクセンブルク当局も欧州委の決定には同意できないとし、法的手段も辞さない構えを見せている。