欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/10/26

EU情報

EU・米がTTIPの年内合意を断念、「オバマ大統領の任期中」に目標変更

この記事の要約

EUと米国は19~23日にフロリダ州マイアミで環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の第11回交渉会合を開き、関税の撤廃や規制の調和などについて協議した。双方は2015年中の合意を目指して交渉を重ねてきたが、米通商代表部( […]

EUと米国は19~23日にフロリダ州マイアミで環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の第11回交渉会合を開き、関税の撤廃や規制の調和などについて協議した。双方は2015年中の合意を目指して交渉を重ねてきたが、米通商代表部(USTR)のマラニー首席交渉官は会合後の会見で「オバマ大統領の任期中(17年1月まで)に交渉を完了することが重要だ」と述べ、年内合意を事実上、断念したことを明らかにした。

EUと米国は貿易と投資に関するあらゆる障壁の撤廃を目指し、2013年7月にTTIP交渉を開始した。当初は2014年末までの大筋合意を目指していたが、投資家保護の仕組み、食品・医薬品・自動車などの安全基準、環境保護や個人情報保護などに関連した規制の調和などをめぐって交渉が難航している。

EUのベルセロ主席交渉官は会見で、EUと米国の双方に交渉の早期妥結に向けた「強い政治的意思」があり、今回の交渉会合ではそれを具体的なかたちにして前進することができたと述べた。一方、マラニー氏は今月初めに大筋合意した環太平洋経済連携協定(TTP)交渉に言及し、「世界的規模で貿易と投資に関する障壁を減らすため、オバマ政権がどのような姿勢で取り組んでいるかを示すものだ」と強調。「オバマ大統領の任期中に交渉を終えるため、時間を最大限有効に使う必要がある」と述べ、今後4カ月ほどが交渉の山場になるとの考えを示した。

EU内では難航していたTTP交渉が一区切りついたことで、今後は米国がTTIPを最優先と位置づけ、交渉に弾みがつくとの見方も出ていた。ベルセロ氏は「市場アクセスに関して大きな進展があった」と述べる一方、「食品安全や個人情報保護などの政策に関してEUが規制方針を変えることはない」と発言。非関税分野で依然として溝が埋まっていない現状が改めて浮き彫りになった。