欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/11/2

EU情報

ハチソンのテレフォニカ英子会社買収、欧州委が本格調査

この記事の要約

欧州委員会は10月30日、香港の複合企業CKハチソン・ホールディングスがスペインの通信大手テレフォニカの英携帯電話サービス部門O2を買収する計画をめぐり、本格調査を開始したと発表した。ハチソンは英国で展開する携帯電話サー […]

欧州委員会は10月30日、香港の複合企業CKハチソン・ホールディングスがスペインの通信大手テレフォニカの英携帯電話サービス部門O2を買収する計画をめぐり、本格調査を開始したと発表した。ハチソンは英国で展開する携帯電話サービス事業「スリー」とO2の統合を計画しており、欧州委は両社の取引を認めた場合、英国の携帯電話サービス市場で公正な競争が阻害される恐れがあるとみている。

テレフォニカは今年3月、O2を102億5,000万ポンドでハチソンに売却することで合意した。英2位のO2と4位のスリーの統合が実現すると、新会社の市場シェアは40%を超え、最大手のEEを抜いて首位に浮上する。

欧州委はEE、O2、スリーにボーダフォンを加えた4社が支配する英国の英携帯電話サービス市場で業界2位と4位の統合が実現した場合、競合する事業者が3社に減ってさらに寡占化が進み、競争圧力が低下して価格上昇や投資の縮小を招く恐れがあると指摘。また、仮想移動体通信事業者(MVNO)に通信インフラを貸与する事業者が減ることで、MVNO側の選択肢が狭められ、価格交渉力も低下するとの懸念を抱いている。

欧州委はこうした観点から慎重に調査を進め、来年3月16日までに結論を下す。ハチソンは声明で、テレフォニカとの取引が「市場競争と消費者の双方にとってプラスに作用する」と強調し、計画の承認に自信を示している。アナリストらは欧州委が承認の条件として、テレフォニカに一部資産の売却を求めるとみている。

欧州通信市場では競争力強化に向けた業界再編の動きが活発化しているが、ノルウェーのテレノールとスウェーデンのテリアソネラは9月、競争上の理由から欧州委の承認を得ることは困難と判断し、デンマークの携帯電話サービス事業を統合する計画を撤回した経緯がある。