欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/5/19

西欧

仏がアルストムのエネ部門買収に“待った”、新法令でGEを牽制

この記事の要約

フランス政府は15日、エネルギーなど国内の「戦略的」な企業の外国企業による買収について、政府の事前承認を取り付けることを義務付ける法令を交付し、16日付で施行した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)による仏エンジニアリン […]

フランス政府は15日、エネルギーなど国内の「戦略的」な企業の外国企業による買収について、政府の事前承認を取り付けることを義務付ける法令を交付し、16日付で施行した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)による仏エンジニアリング大手アルストムのエネルギー部門買収に“待った”をかけた格好で、大きな波紋を広げている。

アルストムをめぐっては、4月末にGEが発電用タービン、送配電機器などエネルギー部門を123億5,000万ユーロで買収することを提案した。これに対して、ライバルの独シーメンスが、アルストムのエネルギー部門を取得する代わりに、アルストムがシーメンスの高速鉄道、機関車部門を取得するという資産交換方式での買収に乗り出したが、アルストム取締役会は30日、GEの提案を全会一致で支持。社外取締役による特別委員会が買収案を精査し、5月末までに買収受け入れの可否を最終判断することになっている。

仏政府は当初からGEによる買収に批判的だった。原子力技術などを手がけるアルストムが国家にとって重要企業であることや、買収後の雇用維持に対する懸念が背景にある。

フランスでは2005年から、防衛関連などの戦略的産業の外国企業による買収に、政府の承認を求める法令が導入されている。仏メディアが「アルストム法」と呼ぶ新法令では、戦略的産業の対象にエネルギー、運輸、通信、医療、水道などを加え、関連企業または一部事業の買収や、3分の1を超える出資に政府の事前承認を義務付けた。フランスの優良銘柄で構成される主要株価指標「CAC40」に採用されている有力企業の約4分の1が対象となる。

政府の今回の動きには、GEに買収を断念させるか、アルストムや政府にとってより有利な買収条件を引き出す狙いがあるとみられる。

政府はアルストムがエネルギー部門を手放す代わりに、鉄道部門を大きく強化できるシーメンスの提案なら支持する用意があることをちらつかせており、モントブール経財相は記者団に15日、「シーメンスとは建設的な協議をしてきたが、GEとはそうではない」と述べ、シーメンス寄りの姿勢を改めて示した。今回の介入には、アルストムがGEの買収案受け入れに傾いたことで正式な買収提案を見送っているシーメンスの背中を押す意図もあるようだ。

ただ、こうしたフランスの保護主義的な政策はEUのルールに反する可能性があり、欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は15日の記者会見で、新法令がEU法に違反していないか調査する方針を示した。