欧州委員会は11日、ベルギーが多国籍企業に適用している法人税の優遇制度は違法な国家補助にあたると結論づけ、同国の税務当局に追徴課税するよう命じた。対象となるのは欧州企業を中心とする多国籍企業35社で、追徴額は総額7億ユーロに上る見通し。具体的な企業名は明らかにしていない。
欧州委が問題視していたのはベルギーで2005年に導入された「超過利益制度」と呼ばれる優遇税制。多国籍企業はスケールメリットを生かして効率よく事業展開できるため、1カ国だけに拠点を置く企業と比べてより多くの利益が発生すると考えられる。ベルギーでは多国籍企業を誘致するための優遇策として、こうして生まれる「超過利益」を非課税としており、最大で90%の利益が控除の対象となるケースもある。
欧州委は昨年2月から進めていた調査に基づき、特定の多国籍企業にのみ適用される優遇税制は、EU市場における公正な競争を阻害する違法行為と結論づけた。ベスタエアー委員(競争政策担当)は「ベルギーはEUの国家補助ルールに違反し、市場競争をゆがめてきた。加盟国には投資を呼び込むためのさまざまな合法的手段があるにもかかわらず、一部の多国籍企業だけを優遇すれば健全な競争が損なわれ、最終的にはEU市民が不利益を被ることになる」と指摘した。
ベルギーのファンオフェルトフェルト財務相は今回の決定について「想定の範囲」としたうえで、欧州委が調査を開始した昨年2月以降は超過利益制度の適用を停止していると説明。追加徴税は極めて複雑な手続きが必要となり、対象企業に深刻な打撃を与えるため、今後の対応については提訴を含めてあらゆる可能性を検討する考えを示している。