欧州委員会は10日、国境を越えるデリバティブ(金融派生商品)規制について、EUと米国の規制は「同等」とみなすことで米商品先物取引委員会(CFTC)と一致したと発表した。これにより、欧米当局は約550兆ドルに上るデリバティブ市場の主要な清算機関を監督するうえで共通のアプローチをとることが可能になり、デリバティブ取引の決済処理を担うEUの中央清算機関(CCP)は米国で清算業務を行うことが容易になる。
金融危機の再発防止に向けた改革の一環として、各国当局はそれぞれ独自にデリバティブ規制を導入した。ただ、清算機関や国際的な金融機関は異なる規制への対応とそれに伴う追加的なコスト負担を強いられるため、EUと米国はおよそ3年前から国際デリバティブ市場の監視体制を調和させる方向で協議を続けていた。CFTCは当初、米国でデリバティブ取引の決済を行う国外の市場参加者にも米国の厳格な規制を適用する方針を打ち出していたが、最終的にEUと米国の規制は「基本的に一致している」と認定。清算機関の適格性要件も調和させることで合意した。
CFTCとの合意に基づき、欧州委は速やかに米国の規制とEU規制の同等性評価を行い、それをもとに欧州証券市場監督局(ESMA)が米国のCCPを正式に認証する。一方、CFTCは自国の規制を遵守することで米国の規制を遵守したとみなす「代替的コンプライアンス措置」を適用し、EUのCCPがEUルールに基づいて米国で清算サービスを提供できるようにするとともに、米国での登録手続きを簡素化する。
欧州委のヒル委員(金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当)は「今回の合意は国際的な規制の調和に向けた重要な一歩だ。協議に長い時間を要したが、デリバティブ市場に確実性をもたらすことができる」と強調した。