加盟国が課税逃れ防止法案で基本合意、多国籍企業に国別報告書提出義務付け

EU加盟国は8日に開いた経済・財務相理事会で、域内で活動する多国籍企業に対して国ごとの収益や支払い税額の報告を義務付ける法案の内容で基本合意した。加盟国の税務当局間で国別報告書を自動交換するシステムを構築し、多国籍企業による課税逃れを防止するのが狙い。法案は6月までに正式に承認される見通しで、加盟国はその後1年以内に国内法を整備する必要がある。

多国籍企業に国別報告書の提出を義務付けるルールは、経済協力開発機構(OECD)が昨年10月にまとめた「税源浸食と利益移転(BEPS)行動計画」に基づき、欧州委員会が1月に打ち出した「租税回避防止パッケージ」の柱の1つ。各国当局が情報を共有して税の透明性を高め、多国籍企業が利益を上げた国で確実に納税する仕組みを確立することを最大の目的としている。

具体的にはEU域内で国境をまたいで活動する多国籍企業(域外に本社を置く企業グループを含む)を対象に、収益、税引き前損益、法人税の納税額、従業員数、資本金、利益剰余金、有形資産を国ごとに報告することを義務付ける。欧州委は多国籍企業の税務情報が各国当局によって確実に共有されるよう、新ルールの順守状況を監視する。

OECDの試算によると、税制の抜け穴を利用した多国籍企業の節税策によって世界全体で年間1,000億~2,400億ドルに上る法人税の税収が失われている。一方、欧州議会によると、欧州では年間に最大700億ユーロの税収が失われているとされる。

欧州議会は多国籍企業による課税逃れ対策を強化するため、国別報告書を提出するだけでなく、開示も義務付けるほか、タックスルーリング(税務当局が企業と結んだ課税措置についての取り決め)に関する情報についても加盟国間で自動的に交換するシステムの導入を求めている。欧州委は現在、国別報告書の開示を義務付けた場合の影響評価を行っており、近くより厳格なルールが打ち出される可能性もある。

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