英が20年に法人税17%に引き下げへ、成長率は下方修正

英国のオズボーン財務相は16日、下院で2016年度の予算演説を行い、20年4月に法人税率を現在の20%から17%に引き下げる方針を表明した。主要先進国のなかで最低水準の法人税率をさらに引き下げ、外国企業の進出を促す。一方、経済見通しでは16年の成長率を従来予想の2.4%増から2.0%増に下方修正し、6月の国民投票でEUからの離脱が決まった場合、英国経済の先行き不透明感が強まるとの見方を示した。

財務省は昨年7月にまとめた15年度の夏季予算案で、法人税の実効税率を17年に19%、20年には18%に引き下げる方針を示していたが、削減幅をさらに広げて17年に19%、20年に17%とする。また、中小企業の税負担を軽減するため、現在6,000ポンドの課税最低限度額を17年から1万5,000ポンドに引き上げる。さらに原油安に配慮して、石油・ガス関連企業に対する減税措置も導入する。一方、多国籍企業による課税逃れを防止するため、英国歳入関税庁(HMRC)の予算を増やして対策を強化する。

個人向けではキャピタルゲイン税率を現行の18%から10%(高額所得者は28%から20%)に引き下げるほか、貯蓄や投資の奨励を目的とする個人貯蓄口座(ISA)の非課税枠を現在の1万5,000ポンドから17年以降は2万ポンドに拡大する。

一方、蔓延する子どもの肥満に歯止めをかけるため、18年から糖分を多く含んだ飲料の製造・輸入業者に課税する新たな制度を導入する。対象となるのは100ミリリットル当たりの糖分が5グラムを超える清涼飲料水。税収は年間5億2,000万ポンド程度に上る見通しで、学校でのスポーツ活動を支援するための資金として活用される。

予算責任局(OBR)によると、経済成長率は16年の2.0%増から17年は2.2%増に回復するものの、18年は2.1%増に減速する見通し。中国の景気減速など世界経済の先行き不安を背景に、家計部門の消費支出や企業の設備投資が伸び悩むとし、昨年11月時点の予想をそれぞれ下方修正した。

財政見通しに関しては、昨年11月時点で16年度の財政赤字を国内総生産(GDP)比で2.5%と予想していたが、今回2.9%に修正した。そのうえで、20年までに財政収支を黒字化するとの目標は堅持し、達成に向けて19年度までに公的支出を追加で35億ポンド削減する方針を打ち出した。

オズボーン財務相は「金融市場は大きく混乱している。生産性の伸びは低く、世界経済の見通しも弱い」と指摘。国民投票でEU離脱が決まれば英国経済は多様なリスクにさらされ、景気見通しはさらに悪化すると警告した。

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