欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/5/26

EUその他

有給休暇中の従業員にも歩合給必要、欧州裁が英制度を違法と判断

この記事の要約

欧州司法裁判所は23日、企業は有給休暇中の営業・販売職の従業員に対し、基本給に加えて歩合給も支給しなければならないとする判決を下した。司法裁は有給休暇中に基本給しか支払われない場合、報酬に占める歩合給の割合が高い営業職な […]

欧州司法裁判所は23日、企業は有給休暇中の営業・販売職の従業員に対し、基本給に加えて歩合給も支給しなければならないとする判決を下した。司法裁は有給休暇中に基本給しか支払われない場合、報酬に占める歩合給の割合が高い営業職などは休暇を取ることで不利益を被ることになり、労働者の権利を定めたEUの労働時間指令に違反すると結論づけた。

今回の事案は、英都市ガス最大手ブリティッシュガス(BG)に勤務する営業職のスタッフが有給休暇中に基本給しか支払われなかったことを不服として、英労働裁判所に訴えを起こし、同裁判所が欧州裁に判断を求めていたもの。原告の場合、報酬の約6割を歩合給が占めていた。

欧州裁は判決で、EU法は域内の企業に対して有給休暇中の従業員に「通常の報酬」を支払うよう義務付けており、出来高制を採用している場合は基本給に加えて歩合給も支給しなければならないと指摘。有給休暇中は基本給のみ保障すれば良いとした英国の制度はEU法に違反すると結論づけ、英政府に現行法の見直しを求めた。ただ、保障すべき歩合給の算定基準については各国の裁判所に判断を委ねるとしており、今回の事案に関しては英労働裁が最終的な決定を下すことになる。

BGの担当者はロイターの取材に対し、同社ではすでに雇用契約の見直しを進めているが、労働裁が最終的にどのような判断を示すかを見極める必要があるとコメントしている。一方、大手法律事務所ホワイト・アンド・ケースのスティーブン・ラベンスクロフト弁護士は、今回の判決を機に、英国では営業や販売スタッフが有給休暇中の歩合給の支払いを求めて裁判所起こすケースが激増すると予測。「英国企業は著しい負担増を強いられることになる」と警告している。