欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/5/26

EUその他

アザラシ製品の禁輸めぐる紛争、EUの勝訴確定

この記事の要約

カナダとノルウェーがEUによるアザラシ製品の輸入禁止は不当な措置として世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、WTOの上級委員会は22日、EUに軍配をあげた紛争処理小委員会(パネル)の判断を支持し、訴えを退ける裁定を […]

カナダとノルウェーがEUによるアザラシ製品の輸入禁止は不当な措置として世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、WTOの上級委員会は22日、EUに軍配をあげた紛争処理小委員会(パネル)の判断を支持し、訴えを退ける裁定を下した。これによって同紛争はEUの勝訴が確定した。

EUは2010年、撲殺など残虐な手法が用いられるアザラシ猟に対する批判が域内で強まっているとして、倫理的観点からアザラシの生皮、肉、油脂や、それらを用いた製品の輸入を禁止する措置を導入した。これにアザラシ猟が盛んなカナダとノルウェーが反発し、WTOに提訴したが、パネルが昨年11月にEUを支持する裁定を下したことから、上訴していた。

カナダとノルウェーは、アザラシ猟を残虐とする見方は偏見に基づくもので、EUで広く行われているシカ猟と変わらないと主張。また、先住民族が自給のため伝統的な方法で行うアザラシ猟や、EU加盟国デンマークの自治領であるグリーンランドでの猟が認められていることから、差別的措置として禁輸解除を求めている。

しかし、WTOの上級委は、EUの禁輸措置で両国が通商上の打撃を受けることは認めながらも、アザラシ猟に対するEU市民の「倫理上の懸念」が強いことから、このケースでは倫理的問題が商業上の利益より優先されるというパネルの判断を踏襲。差別的措置という面に関しても、カナダとノルウェーの主張に一定の理解を示したが、EUは例外扱いしている分野でも規制を強化するのが筋だと指摘するにとどまり、禁輸継続を認める裁定を下した。