欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/5/26

西欧

アストラゼネカ、ファイザーの新買収提案も拒否

この記事の要約

英製薬大手アストラゼネカは19日、米ファイザーが再提示した買収案も拒否すると発表した。ファイザーは同案を「最終提案」として、アストラゼネカが応じない場合は敵対的買収に踏み切らず、断念する方針を示していたことから、買収によ […]

英製薬大手アストラゼネカは19日、米ファイザーが再提示した買収案も拒否すると発表した。ファイザーは同案を「最終提案」として、アストラゼネカが応じない場合は敵対的買収に踏み切らず、断念する方針を示していたことから、買収によって世界最大の製薬企業になる計画の実現が難しくなってきた。

ファイザーはアストラゼネカ株主に現金を支払うほか、買収で誕生する新会社の株式を割り当てる形での買収を目指している。4月に総額588億ポンド(約689億ユーロ)での買収をアストラゼネカに提案したファイザーは、「当社の価値を過小評価している」として拒否されたことから5月2日に631億ポンドに増額した。それでも受け入れられなかったため、18日に「最終提案」として約693億ポンドに引き上げ、現金による支払いに部分も従来の32%から45%に引き上げた。

しかし、1株当たり55ポンドという価格は、アストラゼネカ取締役会が要求する58.85ポンドと大きな開きがある。アストラゼネカのヨハンソン会長は、価格が低すぎるほか、買収には株主に大きなリスクが伴い、雇用にも悪影響を及ぼすと指摘。ファイザーの買収提案では価格だけが焦点となっており、買収後の戦略などに関する提案はなく、さらにアストラゼネカとの統合で新会社の本社を米国から法人税が低い英国に移して税負担を下げるという財務目的が大きい点にも批判の矛先を向け、新提案の受け入れ拒否を表明した。

ファイザーは「同買収の命運は、いまやアストラゼネカの株主が握ることになった」として、同社が十分な内容と自信を持つ買収提案をアストラゼネカ株主が支持し、経営陣に受け入れを迫る形での実現に期待を寄せている。しかし、アストラゼネカは一部の大株主から買収拒否への支持を取り付けており、買収提案の期限である26日までに状況が一変する可能性は低いようだ。