EUは25日、ブリュッセルで財務相理事会を開き、多国籍企業の課税逃れを防止するための法案について協議した。欧州員会が提案している新たな規制策のうち、低税率国への利益移転による節税行為を抑制するためのルールなどについて加盟国の意見がまとまらず、6月の次回会合に結論を持ち越した。議長国オランダを中心に協議が進められるが、税制改革には加盟国の全会一致による承認が必要で、調整は難航が予想される。
欧州議会によると、税制の抜け穴を利用した多国籍企業の節税策により、EU加盟国では最大で年間700億ユーロの税収が失われている。ルクセンブルクの税務当局が同国に進出している世界の大手企業との間で取り決めを結び、極めて低い法人税率を適用していた実態が明るみに出た「ルクスリークス・スキャンダル」を機に、多国籍企業の課税逃れに対する批判が高まるなか、欧州委は今年1月、2つの指令案と1つの通達から成る「租税回避防止パッケージ(Anti Tax Avoidance Package)」を発表した。このうち柱となるのは、広く用いられている課税逃れのスキームに対抗するためのルールを定めた「租税回避防止指令」で、タックスヘイブン(租税回避地)への利益移転に対する規制策などが盛り込まれている。
欧州委は低税率国やタックスヘイブンに設立した子会社への利益移転について、移転先の税率が親会社のあるEU加盟国の税率の40%未満の場合、当該加盟国が第3国に移転された利益に課税できる制度の導入を提案している。財務相理ではルクセンブルク、アイルランド、ベルギーなどがこれに反対を表明。さらに、EU内の企業が域外の非課税国で計上した利益や配当への課税を義務づけるルールの導入についても加盟国の意見が分かれた。
オランダのデイセルブルム財務相は、タックスヘイブンでの取引を暴露した通称「パナマ文書」の公開を機に、大企業の租税回避に対する批判がさらに高まっている現状を踏まえ、「税逃れ対策を先送りすることは許されない」と強調。一連の法案について6月中の合意を目指す考えを示した。